2023 Fiscal Year Research-status Report
Clinical investigation on factors affecting pharmacokinetics for the individual dosing design of orexin receptor antagonists
Project/Area Number |
23K06237
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
賀川 義之 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90397505)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | レンボレキサント / 臨床薬物動態 / オレキシン受容体阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新規不眠症治療薬であるオレキシン受容体阻害薬の治療効果及び安全性を高めるための精密投与設計の構築を目的として、血漿中遊離形及び総薬物濃度を測定し、実臨床におけるオレキシン受容体阻害薬の体内動態に及ぼす因子を同定するものである。報告書作成時点において、呼吸器内科病棟入院中のレンボレキサント(LEM)服用患者49名の同意を取得し、血漿中総薬物濃度、遊離形濃度及び血漿中4 β -hydroxycholesterol(4 β -OHC)濃度を測定した。なお、CYP3A活性を反映する血漿中4 β -OHC濃度のキラル分離カラムを用いるLC-MS/MS測定法は既に確立済みである。LEMの総薬物濃度/体重調整投与量(C/D)比は、血漿中4 β -OHCと有意な負の相関を示し、LEMの消失がCYP3A活性により影響を受けることが確認された。CYP3A誘導剤及び阻害剤の非併用群において、LEMのC/D比(総濃度及び遊離形濃度)は、血清CRP値と有意な正の相関を示し、LEMの消失が炎症状態の影響を受けることが明らかになった。また、LEMのC/D比(総濃度及び遊離形濃度)は、年齢と有意な正の相関を示し、高齢になるに従って消失が遅延する傾向がみられた。一方、血清アルブミン値やBMIはLEMのC/D比(総濃度及び遊離形濃度)と有意な相関を示さなかった。血清CRP値やアルブミン値とLEMの血漿中濃度との関係において、総濃度と遊離形濃度は同様の傾向を示した。以上より、炎症を有する高齢患者においては、LEMの血漿中総濃度及び遊離形濃度が共に上昇しやすいため、LEM投与量の減量が必要と考えられる。現在、CYP3A関連遺伝子多型(CYP3A5及びPOR)とLEMのC/D比との関連性について研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者リクルートを順調に進めており、報告書作成時点で49名のレンボレキサント服用患者の血漿中総及び遊離形濃度の測定を完了している。薬物動態関連遺伝子多型の検出に関しても、既に実績があり、プロトコルが完成している。また、対象者に呼吸器癌患者が多いことから、がん悪液質とレンボレキサントの体内動態との関連性についても検討したいと考えており、さらなる研究の発展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
患者リクルートを順調に進めていることから、今後も共同研究者と密接に連携を取り、引き続き症例数を集積していくこととする。また、対象者に呼吸器癌患者が多いことから、がん悪液質とレンボレキサントの体内動態との関連性についても検討したいと考えている。臨床使用におけるレンボレキサントの体内動態影響因子を同定する研究をさらに推進し、薬物血漿中濃度の治療域を設定すると共に、薬物動態関連因子を組み込んだ精密投与設計法の構築に結びつけたいと考えている。
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Causes of Carryover |
薬物血漿中濃度の測定に用いている高速液体クロマトグラフー質量分析計の一時的な不調により、測定計画に若干の遅延が生じたため、関連試薬の購入が後ろ倒しになったことによる。
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