2023 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the regulation of placental barrier factors for prediction of placental endocrine disruption
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23K06240
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野口 幸希 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (10803661)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 胎盤関門 / 栄養膜細胞 / ステロイド合成 / 遺伝子発現制御 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト胎盤では、胎盤関門を形成する合胞体栄養膜細胞が、内分泌器官としても機能する。Forskolin添加によるリン酸化シグナル (PKA) の活性化によって合胞体栄養膜細胞様に分化させたJEG-3細胞およびmiR-126を過剰発現させたJEG-3細胞から抽出したメッセンジャーRNAの網羅的解析において、両者で共通して、未処理JEG-3細胞と比較して発現シグナルが変動した遺伝子を抽出し、KEGG pathway解析を行ったところ、HSD17B1、CYP19A1、CGA、CYP2J2、およびHSD11B2の増加によるステロイドホルモン合成系の活性化が示唆された。miR-126導入によるこれらの遺伝子発現変動をリアルタイムPCRで解析したところ、JEG-3細胞にmiR-126を導入することで、HSD17B1、CYP19A1、CGA、およびHSD11B2の発現が有意に増加した。一方、miR-126の標的遺伝子であるLIN28Aの発現は減少した。また、CYP2J2およびHSD3B1の発現にmiR-126が与える影響は示されなかった。CYP19A1およびHSD17B1は胎盤でのエストロゲン合成を媒介する酵素であり、胎児からのエストロゲン前駆体取り込みを担うOAT4の発現量もmiR-126によって増加したことから、合胞体栄養膜細胞において、miR-126は、エストロゲン合成の亢進にはたらく可能性が示された。さらに、HSD11B2は、コルチゾールからコルチゾンへの転換を担うことで、胎児へのコルチゾール移行を妨げることから、miR-126は胎児への過剰なコルチゾール曝露を妨げることで、胎児成長に影響を与える可能性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miR-126が合胞体栄養膜細胞における内分泌機能のうち、予想通りエストロゲン合成系の亢進に関与する可能性を示すことができ、計画に即して、エストロゲン合成に関与する遺伝子の発現上昇を示すことができた。また、遺伝子発現だけでなく、エストロゲン分泌を評価するための準備を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、JEG-3細胞培養上清中のステロイドホルモン濃度をLC-MS/MSおよびELISAを用いて測定することで、miR-126が遺伝子発現だけでなく、実際のエストロゲン分泌に与える影響を評価予定である。また、胎盤ステロイド合成系に関与する遺伝子の発現機構へのmiR-126の関与についても解析を進める。
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Causes of Carryover |
JEG-3細胞における遺伝子発現をRNAシーケンシングで解析し、miR-126が変動に関与するステロイドホルモン合成経路を明らかにする予定であったが、過去のマイクロアレイデータを再解析し、リアルタイムPCRと組み合わせることで再現性を取ったため、RNAシーケンシング委託解析費用が不要となった。また、研究成果について、次年度以降に学会および原著論文での発表を見込んでおり、学会参加費および旅費と、論文投稿料および英文校正料としての出費を見積もっている。さらに、今年度の成果に基づき、次年度は、エストロゲン前駆体や質量分析に用いる試薬の購入を計画している。マイクロRNAも追加購入が必要である。
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