2023 Fiscal Year Research-status Report
免疫誘導機能を搭載した善玉細菌由来細胞外小胞の経口接種による疾患発症予防法の開発
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23K06244
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
森下 将輝 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (10811747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝見 英正 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (30434666)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 善玉細菌 / 経口接種 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
経口接種型の飲むワクチンは、注射型ワクチンと比較して多角的な免疫を誘導できる。しかし、その開発では安全性の課題として悪玉細菌由来成分の免疫賦活剤による傷害性、有効性の課題としてワクチンの胃酸分解や抗原取込細胞 (M 細胞) への低い送達性を抱えており、安全かつ有効な飲むワクチンの開発は困難な状況にある。本研究では生体適合性の新規免疫賦活剤 (乳酸菌由来 細胞外小胞) に経口接種後の免疫誘導に必要な機能を搭載し、安全かつ有効な飲むワクチンの開発を目指す。 当該年度は細胞外小胞への腸溶性コーティングを試みた。乳酸菌の培養はMRS培地を用い、細胞外小胞の回収は超遠心操作により行った。この時、得られる細胞外小胞の回収量の増大を目的として、乳酸菌を好気培養した。経口投与型の細胞外小胞を作製するために、まず細胞外小胞をアルギン酸ナトリウム水溶液と混合し、次いで塩化カルシウム溶液中に滴下した。キトサン溶液と反応した後、腸溶性コーティング剤である酢酸フタル酸セルロースによる修飾を施した。その後、胃および腸を想定した環境下での放出性の評価を行った。尚、放出性の評価には事前に蛍光標識した細胞外小胞を用い、サンプル中の蛍光強度を放出率の指標とした。模擬胃液(pH1.2)の存在下では細胞外小胞の放出は殆ど認められなかったのに対し、模擬腸液(pH6.8)では経時的に細胞外小胞が放出されることを確認した。この結果より、経口投与後の最大の障壁である胃酸分解を免れ、抗原取込細胞であるM細胞に効率的に細胞外小胞が送達される可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では善玉菌由来の細胞外小胞を用いた経口接種型ワクチン開発を目指しており、その最大の障壁は経口投与後の胃酸によるワクチン成分の分解である。これに対して申請者は腸溶性コーティングを施すことにより、酸性環境下での細胞外小胞の分解を回避できること、および腸の環境下で細胞外小胞が放出されることを確認できた。従って、経口接種型ワクチン開発に向けた今後の研究を予定通り実施できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞外小胞への抗原及びM細胞指向性の付与を行う。付与には申請者が開発した糖の代謝機構とアジド-アルキン反応を組み合わせた表面修飾法を用いる。すなわち、乳酸菌培養液にアジド糖 (アジドグルコサミン) を添加し、菌体表面に反応性官能基のアジド基を挿入させておく。別途、搭載分子の gp70 (がん抗原)/CTB (cholera toxin B サブユニット由来 M 細胞親和性タンパク質) に対して架橋剤を用いたアルキン修飾を施す。培養液中に分泌されたアジド基挿入細胞外小胞を超遠心操作で回収する際にこれらのアルキン修飾分子を添加し、アジド―アルキン反応による細胞外小胞への機能付与を行う。抗 gp70 抗体、抗 CTB 抗体を用いたウェスタンブロッティング法を行うことにより、細胞外小胞へこれらの分子が付与されたことを確認する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、当該年度は細胞外小胞に対して抗原、腸溶性コーティング剤、M細胞標的素子の3種類の分子を搭載し、その分子の検出をする予定であった。これに対して、腸溶性コーティング剤の修飾とその後の模擬胃液・腸液中での細胞外小胞の放出性の評価には成功したが、再現性確認の実験に時間を要したため、抗原、M細胞標的素子の搭載実験には至らなかった。これらの要因により次年度使用となる助成金が発生した次第である。翌年度は上記の分子の搭載に加え、計画通り酸性環境下での安定性も評価する予定である。従って翌年度は当初よりも多くの物品費を支出する計画であることから、関連経費の執行に際しては次年度使用額を充てる予定である。
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