2023 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイント阻害薬の副作用早期発見のための指標と安全な診療体制の確立
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23K06251
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Research Institution | Kobe City Medical Center General Hospital(First Clinical Division, Second Clinical Division, Third |
Principal Investigator |
池末 裕明 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 薬剤部副部長 (60748010)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害薬 / 副作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞に対し免疫寛容状態にあるT細胞を活性化させ、腫瘍免疫を発揮する。適応がん種の拡大や一次治療として推奨されるなど、治療の機会は年々増加し、今後も伸展すると推定されている。一方、過剰な免疫に伴う有害事象(irAE)として皮膚障害、腸炎、内分泌障害などが発現しうる。またこれらと他の抗がん薬の併用療法も広く行われている。本研究では、irAEおよび抗がん薬による有害事象の早期発見を可能にする情報の収集と、安全で効果的な診療体制の確立を目指す。以上を目的として、初年度は以下の研究に取り組んだ。 (1)irAE管理体制の充実と評価:事前に取り決めた院内プロトコール(主治医による採血検査オーダーが漏れていた場合に薬剤師が検査項目オーダーを補完的に入力する)に基づく支援体制を構築しており、この運用を一部の診療科から院内全科に拡大した。対象拡大前後における検査実施率は拡大前82.6%であったのに対し、拡大後は97.6%に向上した。院内プロトコールを全診療科に運用拡大することで検査実施率が向上し、管理体制の充実に寄与する。 (2)免疫チェックポイント阻害薬の血中濃度測定:既に確立済みの血中濃度測定技術を用いて、約250例に及ぶ血中濃度測定を進めている。 (3)がん薬物療法における有害事象のリスク評価と対策の検討:がん薬物療法では様々な有害事象が発現する。免疫チェックポイント阻害薬と同じくモノクローナル抗体であるパニツムマブでは、重篤な低Mg血症がときに治療継続を妨げる。後方視的研究で、プロトンポンプ阻害薬を併用している患者群で、その発現リスクが有意に高いことが示唆された。この結果は、今後のより安全ながん薬物療法に資する情報になり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
irAE管理体制の充実と評価については、研究計画より早期に進展させることができ、その後も安定した運用を継続できている。 一方、免疫チェックポイント阻害薬の血中濃度とirAEとの関連を検討する点については、現在データを収集している段階であり、概ね計画どおり進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫チェックポイント阻害薬の血中濃度とirAEとの関連を検討する点については、現在データを収集している段階であり、この推進と並行して、がん薬物療法における有害事象のリスク評価と対策の検討に関する研究を推進する。
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Causes of Carryover |
初年度は、研究費をあまり要しない計画である「irAE管理体制の充実と評価に関する研究」を前倒しで推進したため、次年度使用額が生じた。今後、その他の研究を推進していく計画としている。
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