2023 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the mechanism of presbyopia and development of animal models
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23K06263
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中澤 洋介 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (60411708)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 水晶体 / 老眼 / 老視 / 白内障 / モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
老眼はこれまで水晶体タンパク質の変性・修飾反応による水晶体硬化が原因とされているが、その誘因因子は不明であった。水晶体は常にチン小帯や毛様体筋からの圧力によって厚さを変え焦点を調節しているため、焦点調節に圧力需要チャネルが重要な役割を果たす可能性を推察した。そこで本申請研究では、圧需要チャネルのうちPiezo1チャネルに着目し水晶体での機能解明と老眼への寄与について検討することにした。 水晶体上皮細胞株でPiezo1を活性化させると、さまざまな遺伝子の発現が変動した。その中でタンパク質の架橋化酵素に着目した。これまで水晶体硬化メカニズムとしてタンパク質ジスルフィド結合や糖付加反応によるタンパク質変性が原因であることが推察されているが、急激に進行することから、タンパク質架橋形成を誘導する酵素が寄与すると推察した。そこでPiezo1活性化による架橋化酵素の変動に着目した結果、Transglutaminase 2(TGM2)の発現・活性が上昇することを見出した。TGM2はグルタミン酸残基とリジン残基、あるいはグルタミン残基と1級アミンを架橋させるタンパク質架橋化酵素である。そのため、Piezo1の活性化がTGM2を活性化させ、タンパク質の架橋形成と水晶体硬化を誘導していることを明らかにした。さらにin vivoにおいても、Yoda1(Piezo1の活性化剤)を15日間点眼すると、タンパク質の架橋化と水晶体硬化が認められ、本実験系は、老視のモデル動物となりうることが示唆された。なお本年度の研究成果は、Experimental Eye Research (2023)に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本採択研究では、他臓器で加齢性組織硬化に関与することが報告されているPiezo1チャネルに着目し、水晶体硬化のメカニズム解析および、水晶体硬化誘導モデル動物の作成を試みた。 まず、水晶体でのPiezo1の機能を検討するため、ヒト水晶体上皮細胞株およびラット初代水晶体上皮細胞を用いて、Piezo1活性化に伴う遺伝子変化を検討した。その結果、タンパク質架橋化酵素のTransglutaminase 2(TGM2)の発現・活性がPiezo1に伴って上昇することが明らかとなった。 また、水晶体老化モデル動物作成を目指し、マウスにPiezo1活性化剤(Yoda1)を点眼した。その結果、Yoda1点眼群では水晶体硬化が誘導されていることが明らかとなり、老眼モデル動物としての可能性が示唆された。ここまで予想以上に研究が進み、本結果は、Experimental Eye Research (Doki et al., 2023)に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
水晶体硬化のモデル動物が作成できたことは、近い将来の医薬品創製へと大きく前進することが予想される。一方で本モデル動物の水晶体硬化が一過性であるかあるいは不可逆的であるか、またPiezo1やTGM2の細かい制御分子メカニズムを検討することで創薬標的探索へと繋げる。今後、本モデル動物の有用性を検討するとともに、Piezo1のタンパク質架橋化への寄与と可逆性、細かい制御機構を検討する。さらにこれまで水晶体弾性を抑制することが示唆されている医薬品やサプリメントで検討し、本モデルの有用性をより高めていく。
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Causes of Carryover |
本年度は概ね計画通りに研究を遂行することができたが、一部試薬が海外からの輸入品であり、発注から5ヶ月しても届かず来年度使用となった。
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