2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K06296
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
串田 良祐 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10707003)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | Muse細胞 / 臍帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
Multilineage-differentiating Stress Enduring cell (Muse細胞)は生体組織に存在する腫瘍性を持たない多能性幹細胞である。一般的に多能性幹細胞はナイーブ型とプライム型に分類することができ、成体組織由来Muse細胞はプライム型の多能性幹細胞であると想定されているが、胎児付属物である臍帯は幼弱な組織であるため、臍帯由来Muse細胞は成体組織由来Muse細胞と比べ、より未分化なナイーブ型の幹細胞に近い状態であるとされている。本研究では体性幹細胞であるMuse細胞から全能性に近い細胞を樹立することを目的としている。本年度は以下2項目を行った。 (1) ヒト臍帯由来Muse細胞の多能性亢進に関わる因子の同定 RNA sequencing(RNA-seq)によるヒト臍帯由来Muse細胞の発現分子やシグナル伝達経路の状態に基づき、DNAメチル化酵素阻害薬やヒストン脱アセチル化酵素阻害薬などを含めた低分子化合物や様々なサイトカインをヒト臍帯由来Muse細胞に対して処理し、遺伝子発現解析を行った。その結果、いくつかの組み合わせの条件にて多能性因子の発現上昇が認められた。 (2) ヒト臍帯由来Muse細胞の多能性亢進に関わる細胞外基質の同定 これまでにRNA-seqを用いた網羅的な遺伝子発現解析にてヒト臍帯由来Muse細胞に発現している細胞接着分子が同定できていることから、それらの分子に合わせた細胞外基質上で培養し、網羅的な遺伝子発現解析を行った。現在、得られたデータを解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の進捗状況は、 (1) ヒト臍帯由来Muse細胞の多能性亢進に関わる因子の同定 RNA sequencing(RNA-seq)によるヒト臍帯由来Muse細胞の発現分子やシグナル伝達経路の状態に基づき、DNAメチル化酵素阻害薬やヒストン脱アセチル化酵素阻害薬などを含めた低分子化合物や様々なサイトカインをヒト臍帯由来Muse細胞に対して処理し、遺伝子発現解析を行った。その結果、いくつかの組み合わせの条件にて多能性因子の発現上昇が認められた。 (2) ヒト臍帯由来Muse細胞の多能性亢進に関わる細胞外基質の同定 これまでヒト臍帯由来Muse細胞は細胞外マトリックスなどを使用せず、間葉系幹細胞と同様の培地で培養している。しかしながら、ヒト臍帯由来Muse細胞の細胞表面には成体組織由来Muse細胞では発現していないデスモソーム関連分子が発現することや他の器官・組織とは異なり、ヒアルロン酸を高濃度で含有するなど特殊な細胞外基質で構成される臍帯組織中でヒト臍帯由来Muse細胞は存在することから、適正な細胞外基質を用いることでより多能性を亢進させることができると考えられる。これまでRNA-seqを用いた網羅的な遺伝子発現解析にてヒト臍帯由来Muse細胞に発現している細胞接着分子が同定できていることから、それらの分子に合わせた細胞外基質上で培養し、網羅的な遺伝子発現解析を行った。現在、遺伝子発現解析のデータを解析し、細胞外基質の選定を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 臍帯由来Muse細胞の多能性亢進に関わる細胞外基質の同定 ヒト臍帯由来Muse細胞を特定の細胞外基質上で培養し、網羅的な遺伝子発現解析を行って得られたデータを引き続き解析する。 (2) ヒト臍帯由来Muse細胞由来の全能性細胞の特性解析 多能性を亢進させた低分子化合物やサイトカインおよび細胞外基質の組み合わせた条件でヒト臍帯由来Muse細胞を培養し、特に顕著な結果を示した条件で、single cell RNA-seqを用いた遺伝子発現解析、whole genome bisulfite sequencingによる網羅的なDNAメチル化の解析、CUT&RUNによるヒストン修飾の解析、細胞外フラックスアナライザーを用いた代謝状態の解析、FISHによるX染色体の活性化の評価などを行い、ヒト初期胚との比較を通じてその特性解析を行う。 (3) 機能的な栄養膜細胞と生殖細胞系列への分化誘導 これまで報告されている多能性幹細胞から栄養膜細胞及び生殖細胞系列への分化誘導を参考に多能性を亢進させたヒト臍帯由来Muse細胞で生殖細胞系列への分化誘導を行う。分化誘導後、栄養膜細胞及び生殖細胞系列マーカーの発現を網羅的な遺伝子発現解析や免疫染色、目的の細胞種特有の機能について評価する。
|
Causes of Carryover |
本年度行った低分子化合物やサイトカインを用いた細胞培養において、使用する試薬の変更が必要となったため、一部製品の購入を行わなかった。
|
Remarks |
第23回日本再生医療学会総会 優秀演題賞
|