2023 Fiscal Year Research-status Report
脂質シグナリングによる臓器間ネットワーク制御の分子解剖学的解析
Project/Area Number |
23K06298
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中野 知之 山形大学, 医学部, 准教授 (00333948)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / 体温調節 / インスリン / 多臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は細胞内情報伝達系と脂質代謝系の双方を調節する酵素ファミリーである。本研究ではε型DGK(DGKε)に注目したプロジェクトである。6℃で2週間飼育する寒冷暴露実験により、DGKε-遺伝子欠損(KO)マウスは、野生型マウスに比べて直腸温が低下する。この時、血中インスリンの亢進が認められ、熱産生の責任臓器である褐色脂肪組織ではインスリンシグナルの増強が認められる。インスリンは交感神経刺激を受容するβ受容体を細胞質に内在化することが知られ、寒冷環境下のDGKε-KOマウスの褐色脂肪細胞においても、β受容体は細胞質に検出されるようになる。本研究プロジェクトでは、DGKε-KOマウスに認められる体温低下機構の解明を中心とした多臓器連関メカニズムの解析を行う。プロジェクト初年度である令和5年度は、インスリンレベルの亢進の他、寒冷暴露により生じるDGKe-KOマウスの表現型の解析を行った。さらにインスリン分泌亢進メカニズムの解析に従事し、得られた結果の一部を、所属学会(日本解剖学会)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DGKε-KOマウスでは、2週間の寒冷環境により、インスリン分泌が亢進し体温産生を妨げる可能性を考え、その仮説を検証している。文献的に、インスリンは交感神経受容体を細胞内に内在化することが知られていることから、β受容体抗体を用いた免疫組織化学を行った。その結果、DGKε-KOマウス褐色脂肪では、β受容体の免疫陽性反応が細胞質に認められることを確認した。よって同マウスでは、インスリン依存的にβ受容体が内在化することにより、交感神経刺激を受容できず、体温産生が妨げられると考えられた。次に、インスリンの分泌亢進メカニズムを究明するために、インスリン抗体を用いて膵臓の免疫組織化学を行った。その結果、DGKε-KOマウスにおいてインスリン陽性細胞(β細胞)の増加は生じていなかった。よって、同マウスにおいて認められるインスリン分泌の原因はβ細胞の増加によらないことが明らかとなった。現在は、インスリンによる体温産生抑制メカニズムを解析するためにストレプトゾトシン投与によるβ細胞破壊モデルの解析に従事している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続きインスリン分泌を促進するメカニズムの解明に従事する予定である。本年度の結果から、寒冷環境下DGKe-KOマウスではβ細胞の増加は生じていないことが明らかとなったので、寒冷によりインスリン分泌量自体が増加すると考えられた。よって、インスリン分泌を促進するシグナルの探求にあたる予定である。さらに、マウスから単離した褐色脂肪細胞を用いて、褐色脂肪の熱産生装置に異常がないかを確認する。
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Causes of Carryover |
実験の進行がやや遅れているが、当初の計画通り動物実験を中心に遂行する。解析の進行やこれまでのデータのさらなる精度向上を求め、経費の用途としては、マウス飼育に係る料金や抗体などの消耗品さらに旅費を予定している。
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