2023 Fiscal Year Research-status Report
リンパ管内皮細胞におけるFoxo1のFerroptosis調節への関与
Project/Area Number |
23K06309
|
Research Institution | Kagawa Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
古山 逹雄 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (20238702)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新美 健太 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 講師 (40807509)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | フェロトーシス / リンパ管内皮細胞 / Foxo1 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェロトーシスは鉄イオン依存性の過酸化脂質の過剰産生によって生じる細胞死であり、腫瘍形成過程や炎症などの病態と深くかかわっていることが知られている。これまでにリンパ管内皮細胞におけるFOXO1転写因子の機能を明らかにする過程において、DNAチップ解析によりFOXO1の発現抑制を行うとSlc7a11の発現が著しく抑制されることを見出した。Slc7a11はシスチンの細胞内取り込みに必要な輸送体xCTの構成成分であり、細胞内に取り込まれたシスチンはグルタチオン(GSH)の合成に使用される。GSHは過酸化脂質を無毒化する酵素GPX4の活性化に必須であり、フェロトーシスの抑制に寄与している。 最初に、HDLEC(ヒト皮膚リンパ管内皮細胞)においてFOXO1の発現を抑制することによりSlc7a11の発現はmRNAおよび蛋白レベルで有意に抑制されることを確認した。この時、他のフェロトーシス関連遺伝子の発現も検討したところACSL4の発現上昇、GPX4、FSP1、SLC40A1の発現抑制が有意に観察された。しかしこれらの蛋白の発現量には有意な変化は認められなかった。またFOXO1の標的遺伝子であるMn-SODやCatalaseなどの過酸化ストレス抑制遺伝子の発現には有意な変化が認められなかった。このようにFOXO1の発現抑制により特異的にSlc7a11の発現が抑制されることから、RSL3で生じるフェロトーシスへのFOXO1発現抑制の影響を検討したところ、有意な促進作用が認められた。またこの促進作用はフェロトーシス阻害剤により完全に抑止され、アポトーシスやネクローシス阻害剤では抑制できなかった。以上のことからHDLECにおいてFOXO1の発現抑制はフェロトーシスを促進する作用があることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた実験項目は実行できた。また予想していた結果にほぼ近い結果がえられている。
|
Strategy for Future Research Activity |
HDLECにおいてFOXO1を発現抑制することによりシスチン輸送体xCTの発現抑制がおこり、フェロトーシスが促進されることが確認されたので以下の実験を行っていく。① FOXO1を抑制すると、実際にGSHが合成される量が低下しているのかを生化学的に検討する ② 逆に、FOXO1を強制発現するとフェロトーシスが抑制されるのかを、FOXO1の発現ベクターを用いてHDLECに強制発現してフェロトーシスへの影響を調べる ③ この現象がHDLECに限られたものであるか否かを検討するため、血管内皮細胞、HEK293、線維芽細胞などのリンパ管内皮以外の培養細胞種を用いたFOXO1の発現抑制に対するSlc7a11の発現変化を検討する ④ FOXO1のリンパ管内皮細胞特異的欠損するマウス、またはリンパ管内皮細胞特異的に活性型FOXO1を発現するマウスにおいてフェロトーシスに関係する表現型を組織学的に検討する。以上の実験を遂行していく予定である。
|
Causes of Carryover |
ほぼ予定通りの支出であったが、一部次年度に行う予定の実験に使用する試薬等があったため次年度に購入して使用する予定である。
|