2023 Fiscal Year Research-status Report
Extracting the detrimental effects of amyloid beta oligomer using contextual learning and controlling it with antagonist molecules
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23K06348
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
美津島 大 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 良一 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (20343022)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Amyloid beta / Intrinsic plasticity / synaptic plasticity / GABAA receptor / AMPA receptor / Lecanemab / membrane resistance / Learning and memory |
Outline of Annual Research Achievements |
ラットを用いてストレス回避学習を行うと、海馬CA1ニューロン上の興奮性シナプスと抑制性シナプスの可塑性が高まり、入力強度が細胞毎に多様化して学習が成立する(Mitsushima et al. Nat Commun 2013)。記憶の維持過程については、Fos発現等を指標にエングラム細胞が標識されてきたが、我々は学習初期の記銘過程に着目し、急性的に形成されるシナプス多様化を指標にする事で、細胞毎に記憶情報量を定量化してきた(Sakimoto,, Mitsushima. Cerebral Cortex 2016 & 2019)。今回、我々が明らかにしてきた海馬CA1ニューロン群における記銘過程モデルを活用し、Amyloid β1-42 (Aβ1-42)の有害作用を系統的に抽出する事で、病態生理への応用を新たに展開する。認知症を情報処理過程の撹乱と考え、学習依存的なシナプス多様化、情報エントロピー拡大(bit)、チャネル分子数に対するAβ1-42 oligomerの作用を捉え、標的分子を特定して拮抗分子を探る。すでに有害作用ポイントは少なくとも4カ所以上明らかにしており、一部については拮抗分子を使った有害作用の中和を試みている。さらに、ヒト型Aβ凝集体を形成するAlzheimer型認知症モデル動物を活用し、有害作用の拮抗と情報処理の改善を進め、学習機能の低下を阻止する。 既に承認されている抗Aβ抗体薬は、脳浮腫や微小脳出血の出現頻度が高く、高額であるため、既に認知症を発症し病態が進行中の患者には適用できない。本研究から情報撹乱の拮抗分子群を特定できれば、広い症例に適用可能なAβ1-42の拮抗戦略に貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が明らかにしてきた海馬CA1ニューロン群における記銘過程を活用し、Aβ1-42 oligomerの有害作用を系統的に抽出して、病態生理への応用を展開した。認知症を記銘過程の撹乱と考え、学習依存的なシナプス多様化、閾値、膜抵抗、チャネル分子数、単一チャネル電流、伝達物質放出確率などを網羅的に比較した結果、Aβ1-42 oligomerの有害作用部位を4カ所以上捉え、その数は現在も増加中である。うち2つについては標的分子を特定し、拮抗実験を行っている。また、Aβ1-42 oligomerを両側CA1にmicroinjectionし、1週間後における海馬内oligomerの分布域と陽性細胞群をCongo Red染色によって明らかにした。エーザイの新規抗体薬Lecanemabを免疫組織染色法に活用し、脳組織内におけるAβ1-42 oligomerの蛍光標識に成功し、グリア細胞やニューロンにおけるAβ1-42 oligomerの分布域を明らかにした。有害作用の拮抗分子については有効濃度を検討中である (Min-Kaung-Wint-Mon,Kida,,Mitsushima. 日本生理学会 2024.3)。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、記銘段階に対するAβ1-42の有害作用を系統的に抽出する。正常学習の記銘過程を解明し、様々な高次機能疾患における正常逸脱点を特定して病態解析への応用に貢献する。抗体薬Lecanemab (Dyck et al. NEJM 2023)を使ったAβ1-42 oligomerの蛍光標識に成功したため、Saline対象群、Aβ1-42群、Aβ42-1群の3群を設定し、定量解析と統計解析を行っている。パッチクランプ法では電位依存性Naチャネル(NaV1.6)、GABAA受容体の単一チャネルなど複数の有害作用点を抽出した。判明した作用点については標的分子を特定して引き続き拮抗分子を探る。正常な記銘機序の解明は、疾患で生じる情報破綻部位の特定に役立ち、病態の診断、制御、治療法確立に応用できる。解析が先行しているNaV1.6の拮抗分子については、学習低下動物の両側CA1に微量注入し、Aβ1-42による学習低下作用の阻止を自由行動動物で確認する。拮抗分子の作用については、我々の行動バッテリーテスト(Sakimoto,,Mitsushima. Sci Rep 2022)を活用し、文脈学習機能、空間認知機能、新奇物体認知機能のみならず、痛覚、視覚、運動機能、情動機能などを総合的に評価し、副作用を含めた薬理作用を総合的に抽出して慎重に評価する。英語論文については1報目の論文が投稿準備中であり、年度内の公表を目指して速やかに投稿を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の実験内容に変更はなかったが、使用する高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の装置に重度の故障が発生し、修理等のため予想外の出費が生じた。物品費を中心に不足額が見込まれたため、R6年度予算のうち、物品費を先行して配分申請した。結果的に今年度の物品費は講座費や共同研究費に置き換える事ができたため、次年度使用が生じた、この次年度使用額は、先行配分頂いた研究費とあわせてR6年度の研究費として使用する。R6年度は、R5年度に明らかにした様々なAβ1-42 oligomerの障害機能に対する、拮抗薬物を投与して各有害作用の中和を図る。また、Aβ1-42 oligomerの存在領域やCA1における陽性細胞数を組織学的に定量評価し、Aβ1-42 oligomerのin vivo海馬アセチルコリン分泌動態に対する影響を個体レベルで解析する。
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