2023 Fiscal Year Research-status Report
光生理学的手法を用いたTwo pore channelにおけるイオン選択性制御の分子基盤の解明
Project/Area Number |
23K06352
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
下村 拓史 生理学研究所, 分子細胞生理研究領域, 助教 (50635464)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 電位依存性イオンチャネル / イオン選択性 / two-pore channel / Caチャネル / Naチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
Two-pore channel (TPC) は、膜電位感受性カチオンチャネル・ファミリーに属し、膜電位だけでなく様々なリガンドにより活性化される。TPCでは当初、細胞のイメージングからはCa2+チャネル透過性が示される一方、電気生理学的手法では高いNa+選択性が測定されるという、イオン選択性に関する矛盾が存在していた。近年、TPCのイオン選択性が切り替えられる可能性を示唆する報告がなされた。本研究では、このイオン選択性切り替えを実現するTPCの分子機構を解明することを目指す。これまでに確立したTPCの光生理学的測定法、非天然アミノ酸導入法などを駆使し、チャネルの生物物理学的観点からも興味深いこの機構の分子的実体を明らかにすることを狙う。 本年度は、TPC3とTPC2の二つのサブタイプについて予備的な実験を進めた。TPC3においては、2番目のS4ヘリックス(DII-S4)とイオン選択性との関連性を調べるため、DII-S4を固定化する各種変異体を詳細に解析した。F514C変異体では、Cd2+の投与によりDII-S4の動きが固定されると考えられる。この変異体の電流測定において、Cd2+の投与によりイオン選択性を反映する反転電位がシフトすることがわかった。また、このシフトの程度は各細胞外カチオンの種類によって異なっていた。一方、TPC2を対象にした実験では、異なるイオン選択性を誘導する薬剤であるA1-NおよびA1-Pを、TPC2を発現するツメガエル卵母細胞に投与した。哺乳類培養細胞を用いた既存の報告のとおり、卵母細胞発現系に対してもA1-NとA1-PはTPC2電流を生じることを確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TPC3において、変異体の同定および発現条件の最適化を、想定通りに進めている。一方、TPC2においては、哺乳類培養細胞系を用いた既存の報告で確認されている、サブユニット共発現による影響の有無を我々の卵母細胞系においては明確に評価できておらず、この点は次年度よりの課題となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
TPC3において、F514Cとその他の変異体での結果を詳細に解析し、DII-S4から選択性フィルターへの影響を調べる。また、TPC2において、A1-NおよびA1-Pのイオン選択性を詳細に調べるとともに、蛍光分子を付与することでDII-S4の動きを調べるvoltage clamp fluorometry法を適用して、イオン選択性、アゴニスト、DII-S4の連関性を調べる。TPC2においては、併行してサブユニット共発現条件の最適化も行い、その影響の有無を詳しく調べる。
|
Causes of Carryover |
本年度の計画は、実験条件を最適化することなどにより当初予想より少ない経費で可能であったため、次年度以降、より精密に実験を進めるための物品費等に充てる予定である。
|