2023 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリアの性質変化に着目したストレスによる神経回路異常の解明
Project/Area Number |
23K06359
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷口 将之 神戸大学, 医学研究科, 助教 (90831751)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ストレス / ミクログリア / エピゲノム / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会から受ける慢性ストレスはうつ病など精神疾患のリスク因子となる。研究代表者らはマウス社会挫折ストレスを用い、ストレスの反復は認知情動変容に伴い特定の前頭前皮質神経細胞の樹状突起の萎縮を誘導すること、この変化にはミクログリアの性質の変化が必須であることを示してきた。従って、ストレスの反復による認知情動変容はミクログリアの性質変化による神経細胞機能異常および神経回路異常に端を発すると推測されるが、その実態は不明である。本研究では、ストレスの反復によるグリア神経細胞相互作用の破綻の分子基盤を解明し、うつ病などストレス関連疾患の病態機序解明や新たな創薬標的創出に資する知見を得る。 本年度は、ミクログリアの遺伝子発現解析及びエピゲノム解析から推定した重要性が高い転写因子に着目し、このfloxedマウスとCX3CR1-CreERTマウスを掛け合わせて作出したミクログリア特異的な遺伝子欠損マウスを用いて、ミクログリアでストレスにより変動する遺伝子発現変化への影響を調べた。その結果、ミクログリア特異的な転写因子の欠損はストレスにより変動する遺伝子の一部を消失させることを見出した。さらに、ミクログリアの遺伝子操作が神経細胞を含む他の細胞種に与える影響を調べるために、単一核RNA-seqを導入し、その最適化を進めている。並行して、上記マウスを用いて、ミクログリア特異的な遺伝子操作が、ミクログリア以外の他の細胞に与える影響を脳組織のバルクRNA-seqとCell-type deconvolution法を組み合わせて調べた。その結果、ミクログリアの遺伝子操作は神経細胞を含む複数細胞種のストレスによる遺伝子発現変化に影響を与える可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ミクログリアの特定の転写因子が、ストレスによるミクログリアの遺伝子発現変化に重要であることを示した。さらに、この転写因子のミクログリア特異的な遺伝子発現操作が神経細胞を含む複数細胞種のストレスによる遺伝子発現変化に影響を与える可能性を示した。また、複数脳領域の全細胞集団を解析するための単一核RNA-seqを新たに導入し、その最適化を進めており、研究をさらに進めるための基盤が整いつつある。以上の研究成果から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析からミクログリアの遺伝子操作が他の細胞種に影響を与える可能性が示された。従って、これらの細胞種相互作用の実態を明らかにするため、単一核RNA-seqを用いた細胞種特異的な解析を進める。また、ミクログリアの遺伝子操作による神経細胞の機能変化については電気生理学的手法も導入し解析を試みる。また、これまでの解析からストレスによるミクログリア及び脳組織の単一細胞RNA-seq、バルクRNA-seqのデータが蓄積しつつあり、オミクス解析の専門家と連携しながらデータ解析手法に改良を重ね、その妥当性を検証する。
|
Causes of Carryover |
研究の実施に伴い、計画の細部に関して見直しを図ることによって本年度の使用額を少々抑えることが出来た。また、次年度に必要な消耗品量などは実施するまで未知の部分があるため、次年度使用額として計上した。使用計画に関しては、当初の研究計画に準じて遂行する。
|