2023 Fiscal Year Research-status Report
がん早期治療の創出に向けたプロテインキナーゼCによる新たながん化メカニズムの解明
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23K06360
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梶本 武利 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00509953)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / プロテインキナーゼC / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)前がん細胞の細胞死回避におけるS1P-aPKCシグナリングの役割およびがん化過程との関連を明らかにし、さらに(2)細胞のがん化におけるS1P-aPKCシグナリングの働きの詳細としてS1P-aPKCの下流シグナルを分子レベルで明らかにすることを目的としている。 2023年度は、「前がん細胞の細胞死回避におけるS1P-aPKCシグナリングの役割の解明」および「機械学習を用いたaPKCのリン酸化基質候補スクリーニングシステムの開発」に取り組んだ。「前がん細胞の細胞死回避におけるS1P-aPKCシグナリングの役割の解明」では、申請者が過去に開発したaPKC活性化レポーターをがんオルガノイドに発現させるためのレンチウイルスベクターの作製を行った。さらにaPKC活性化レポーターレンチウイルスベクターを癌細胞株に感染させてaPKC活性化レポーターの安定発現株を作製し、FRET蛍光イメージング顕微鏡システムを用いてaPKC活性化のリアルタイムイメージングを行い、作製したaPKC活性化レポーターレンチウイルスベクターが正しく動作することを確認した。また、「機械学習を用いたaPKCのリン酸化基質候補スクリーニングシステムの開発」では、aPKCの基質候補をスクリーニング予測するin silico解析システムの開発として、まず各種リン酸化酵素と基質配列を対応させたリン酸化酵素-基質データベースを構築し、次にPython言語を用いて構築したデータベースを教師データとする機械学習分類器を作成した。さらに、作成した機械学習分類器の性能テストとして、未知の基質配列に対するaPKCのリン酸化能評価を行い、有望な結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、本研究課題の最終的な目標の達成に向けて、「前がん細胞の細胞死回避におけるS1P-aPKCシグナリングの役割の解明」および「機械学習を用いたaPKCのリン酸化基質候補スクリーニングシステムの開発」の個別課題を検討した。その結果、それぞれ、aPKC活性化レポーターレンチウイルスベクターの作製と評価、aPKCの基質候補をスクリーニング予測する機械学習によるin silico解析システムの中核部分の開発、を達成しており、おおむね当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、本研究課題の最終的な目標の達成に向けて、引き続き「前がん細胞の細胞死回避におけるS1P-aPKCシグナリングの役割の解明」および「機械学習を用いたaPKCのリン酸化基質候補スクリーニングシステムの開発」の各課題を遂行すると共に、「前がん細胞の細胞死抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」の課題を新たに開始する。 「前がん細胞の細胞死回避におけるS1P-aPKCシグナリングの役割の解明」では、2023年度に構築したaPKC活性化レポーターレンチウイルスベクターの系を用いて、前がん段階および進行段階のそれぞれの膵臓がん細胞由来オルガノイドにおけるaPKCの活性化度合いを検討する。また、「機械学習を用いたaPKCのリン酸化基質候補スクリーニングシステムの開発」では、2023年度に開発した分類器について精度の向上を図るべく、特徴量の最適化など更なる研究開発を進める。また、「前がん細胞の細胞死抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」では、プロテオーム解析の手法を用いて、前がん段階および進行段階の膵臓がん細胞由来オルガノイドにおける活性化aPKCの基質タンパク質の探索を行う。 「前がん細胞の細胞死回避におけるS1P-aPKCシグナリングの役割の解明」および「前がん細胞の細胞死抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」については、2023年度に引き続きカリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究により進める。
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Causes of Carryover |
2023年度は、機械学習によるin silico解析システムの開発の比率が高くなったため、細胞実験等に必要な試薬類の支出が下がった。2024年度における次年度使用額にあたる研究費は、2023年度に引き続き消耗品費として使用するとともに、カリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究に係る費用として使用する。
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Research Products
(7 results)