2023 Fiscal Year Research-status Report
精原幹細胞の同期的な分化制御における統合的かつ同調的な遺伝子発現調節機構の解明
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23K06381
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
廣瀬 智威 横浜市立大学, 医学部, 講師 (20381668)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 精原幹細胞 / 生殖細胞 / 減数分裂 / 転写調節 / メディエーター複合体 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類を始め、生涯を通じて精子産生を続ける動物では、精原幹細胞が未分化性を維持しつつ液性因子の刺激に応じた同期的な分化能も発揮することにより、生殖機能が維持されている。これらの細胞機能の制御には、転写因子の活性化から標的遺伝子の転写・発現までの統合的な調節機構が必要だが、その分子機構は未解明である。増殖刺激やホルモン刺激による転写因子の活性化からRNAポリメラーゼIIによる転写促進までを統合する分子機構として、メディエーター複合体の重要性が示されている。しかし、精原幹細胞の分化制御におけるメディエーター複合体の役割は分かっていない。 本研究計画では、精原幹細胞の分子制御機構としてメディエーター複合体の役割に注目し、精原幹細胞の特徴である同期した分化制御機構の追究を進めている。当該年度は、1)薬剤誘導型メディエーター機能欠損マウスの樹立と基本的な解析、2)薬剤誘導性にメディエーター機能を欠損できる培養精子幹細胞(germline stem cells, GS細胞)の樹立に必要な共同研究とマウスの準備を進めた。 上記1)の成果として、樹立したモデルマウスの解析により、精原幹細胞の初期段階での分化異常を認めた。精原幹細胞の分化開始ではメディエーター複合体が必須の役割を担うことが初めて確認できたので、減数分裂を開始する遺伝子発現制御機構の解明に新しい糸口を得た。上記2)の成果として、戻し交配によってGS細胞樹立に必要な遺伝子背景の変更を進めた。以上の成果の一部を第46回日本分子生物学会年会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薬剤誘導型メディエーター機能欠損マウスは、これまでC57BL/6J系統の遺伝子背景で維持してきたが、GS細胞樹立のためにICR系統への戻し交配が必要である。その戻し交配に予定より時間がかかっているため、研究の進捗にやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られた成果を発展させるべく、以下の研究材料の準備を進める。 1)精原幹細胞の同期的な分化に関与する発現遺伝子を同定するため、精細胞特異的かつ薬剤誘導型のメディエーター機能欠損マウスの樹立を進める。 2)精原幹細胞の分化制御においてメディエーターが担う分子機構を明らかにするため、in vitro/in vivo双方でGS細胞を利用する。そのための薬剤誘導型メディエーター機能欠損GS細胞を樹立する。 以上の研究材料を用い、精原幹細胞の同期的な分化開始に関与する発現遺伝子や転写因子のうち、メディエーター複合体を介して発現制御を受けるものや転写を活性化するものの同定を試みる。 ・1)のマウスとコントロールマウスの精巣を用い、RNA-Seqによるトランスクリプトーム解析から発現変動遺伝子の同定を試みる。 ・各種メディエーター複合体因子に対する抗体を用い、前項と同様のマウス精巣の核抽出液からの免疫沈降産物のプロテオーム解析から、メディエーター複合体が転写伸長を媒介する転写因子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
1)今年度は、薬剤誘導型メディエーター機能欠損マウスの基本的な解析を積み重ねたので、更に次年度では精細胞特異的かつ薬剤誘導型のメディエーター機能欠損マウスの樹立を進め、RNA-Seqによるトランスクリプトーム解析や免疫沈降産物のプロテオーム解析などに次年度分と合わせて経費を充当する。 2)GS細胞樹立のために必要なICR系統への戻し交配に遅れが生じており、GS細胞の培養に必要な試薬・フィーダー細胞等の購入を先送りしたため、次年度分の経費と合わせてGS細胞樹立用に充当する。
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