2023 Fiscal Year Research-status Report
網羅的 eRNA 発現解析による薬剤応答性エンハンサーの同定と機能解析
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23K06396
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
齊藤 紗希 (後藤紗希) 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医学研究センター, 研究員 (60756609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川路 英哉 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医学研究センター, 副センター長 (20525406)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 薬剤応答性エンハンサー / PXR / エンハンサーRNA / CAGE / UGT1A1 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、疾患等と関連する遺伝子多型の多くが、遺伝子発現制御領域であるエンハンサーをはじめとしたノンコーディング領域に存在することが注目されている。薬剤応答性核内受容体 pregnane X receptor (PXR) は、薬物代謝制御における機能的重要性が示されているが、これまでに PXR の標的として機能が明らかにされたエンハンサーは数少ない。本研究では、ノンコーディング領域に存在する薬効や副作用の個人差の原因となる遺伝子多型を明らかにするために、PXR 制御性のエンハンサーの同定とその機能解析を試みた。 はじめに、ヒト PXR を安定的に発現させたヒト肝癌由来 HepG2 細胞株を用いて、Cap Analysis of Gene Expression (CAGE) 法により ノンコーディング RNA のエンハンサー RNA を含む転写産物の開始末端に関する網羅的測定を実施し、薬剤応答性エンハンサーの候補領域を同定した。続いて、PXR の結合 DNA 領域を同定した ChIP-seq データ (PLoS Genet. 2014) およびゲノムワイド関連解析 (GWAS) との比較を通じて、疾患等の形質と関連性の高い PXR 制御性の領域を39箇所同定した。この中で、薬物代謝酵素 UDP glucuronosyltransferase (UGT) 1A1 遺伝子近傍にある候補エンハンサー領域に焦点を当てて実験的検証を行った。その結果、2箇所の領域を UGT1A1 遺伝子の新規薬剤応答性エンハンサーとして同定し、さらに領域内に位置する遺伝子多型が転写活性に影響することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
培養細胞株において CAGE ライブラリの調製を成功させ、ChIP-seq データおよび GWASデータとの統合解析により、薬剤応答性の候補エンハンサーを39箇所同定した。さらに、ゲノム編集により候補エンハンサーの欠損細胞株を樹立して機能解析を行い、UGT1A1 遺伝子の新規薬剤応答性エンハンサーを2箇所同定した。また、同定したエンハンサーに対するルシフェラーゼアッセイにより転写活性に影響を与える遺伝子多型を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定した疾患等の形質と関連性の高い PXR 制御性の39箇所の領域について引き続き機能解析を実施する。具体的には、生体内ビタミンDのレベルに関係することが示された6箇所の領域について焦点を当てて、ゲノム編集およびルシフェラーゼレポーターアッセイによって機能解析を実施する。また、この領域に存在する遺伝子多型が転写活性に与える影響について検討を行う。
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Causes of Carryover |
国内で開催された国際学会に参加したため、当初の予定よりも旅費がかからなかった。未使用額はゲノム編集実験に必要なガイド RNA の購入に充てる予定である。
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