2023 Fiscal Year Research-status Report
TurboID法により同定した新規アセチル化酵素群によるHSF1転写制御機構の解明
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23K06413
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
瀧井 良祐 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00419558)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 熱ショック応答 / 転写 / HSF / 近位依存性ビオチン標識法 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞のプロテオスタシスの破綻はタンパク質凝集体の蓄積を引き起こし、様々な機能障害を引き起こす。その破綻は、老化とともに低下する転写因子HSF1の活性とも密接に関係する。したがって、HSF1転写複合体の解析は神経変性疾患などの有望な治療ターゲットの開発につながる。 研究代表者は、近位依存性ビオチン標識(TurboID)法とプロテオーム解析を基盤にHSF1相互作用因子を同定し、さらに機能スクリーニングを行うことでHSF1を介する新しい転写調節因子としてヒストンアセチル化酵素のATAC複合体とNSL複合体を見出した。熱ストレスを含む様々なストレスによるHSF1転写複合体中のこれらの構成と役割は変化していた。本研究ではこれら両複合体とHSF1との結合様式や結合部位を特定し、ヒストン修飾によるクロマチン構造調節を介したRNAポリメラーゼIIの呼び込み制御機構を解明する。さらに、これら複合体の神経変性疾患モデルにおける効果を明らかにして治療薬としての可能性を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSF1による熱ショック応答の新規の制御因子を同定する目的で、BioID法を行った。実験系を確立するために、42℃熱刺激を10分、30分、60分と加えた時のHSF1の近傍のタンパク質は、熱の時間に依存してその数が増加した。60分が最も因子が多く60分で3回実験を行い、有意差検定を行い、有意な約200のHSF1の近傍タンパク質を同定した。さらに刺激依存的なHSF1の近傍タンパク質を同定する目的で、熱刺激や薬剤によるタンパク質毒性ストレス状態におけるHSF1の近傍に存在するタンパク質の探索を行った。熱刺激は42℃60分、薬剤としてはプロテアソーム阻害剤MG-132、活性酸素刺激を生じる亜ヒ酸ナトリウム、タンパク質の構造異常を引き起こすAZCを用いた。その結果、それぞれの刺激を加えた時のHSF1の近傍のタンパク質を得た。現在、これまで報告のない60の因子に着目し、タンパク質ノックダウンを行い、HSF1による転写制御に関わる新規因子群の探索を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
HSF1の新規の制御因子を同定する目的で、まずBioID法を確立した。さらに熱刺激時だけでなく、HSF1を活性化させる薬剤(MG-132、亜ヒ酸ナトリウム、AZC)を用いた場合におけるHSF1の近傍のタンパク質を同定した。これまでに報告のあるp300やTRIM24だけでなく、数多くの新規の因子を同定した。その中にはこれまで報告のないクロマチン制御因子やRNAスプライシングの制御因子などが数多く含まれていた。そこで、複数の刺激で共に制御すると考えられる約60の因子に着目し、ノックダウンの系を確立する。さらにノックダウン細胞を用い、熱刺激を加えHSP70の誘導能を比較し、その増減によりHSF1の正または負の制御因子探索をする。さらに、個別の因子について、複合体形成やプロモーター部位への呼び込み、代謝関連因子の増減を調べ、これらの因子によるHSF1の活性の制御機構を明らかにする。
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