2023 Fiscal Year Research-status Report
粘表皮癌におけるΔNp63陽性細胞先導による分子浸潤メカニズムの解明
Project/Area Number |
23K06435
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 秀明 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90711276)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 粘表皮癌 / 浸潤 / ΔNp63 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘表皮癌は、頭頚部に好発し、呼吸器をはじめ周囲への高度浸潤をきたすことにより、生命を脅かすと共に高度な機能的・審美的障害を招く癌種である。そのため局所での浸潤制御治療が可能になれば、予後改善及び患者QOLの向上が期待できるが、粘表皮癌浸潤分子メカニズムはこれまでに明らかになっておらず、粘表皮癌の浸潤を標的とした治療戦略は確立されていない。 本研究では粘表皮癌の浸潤先進部にΔNp63陽性細胞が多くみられることに注目し、これら細胞に先導される浸潤メカニズムについて分子細胞生物学的実験および病理組織学的解析により明らかにし、これまでにない粘表皮癌治療戦略開発のための基盤的知見を得ることを目標としている。 本年度は、粘表皮癌培養細胞を用いて、ΔNp63陽性細胞において発現が亢進している浸潤シグナル因子の同定を行った。粘表皮癌細胞株において、ΔNp63のノックダウンを行い、発現アレイを用いた網羅的な検索により、mRNAが減少している遺伝子をピックアップし、これら遺伝子の中で浸潤に関連するもの抽出することにより粘表皮癌の浸潤に関与している因子の候補を絞った。さらに、ΔNp63ノックダウン粘表皮癌細胞で、これら候補遺伝子について実際にタンパク質発現が低下していることを、ウエスタンブロッテイング法により確認した。以上の方法により、粘表皮癌の浸潤に関与していると考えられる浸潤シグナル因子を複数同定することに成功した。さらに、外科的に摘出された病理組織において、浸潤先進部ΔNp63陽性細胞でこれら因子の発現が亢進していることを免疫組織化学により確認することができた。今後は、同定した浸潤シグナル因子を中心に粘表皮癌の浸潤メカニズムを分子細胞生物学的、病理組織学的に解析する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘表皮癌のΔNp63陽性細胞で発現亢進している浸潤に関連する因子を複数見出せている。さらに、これら浸潤シグナル因子の中で、特にΔNp63陽性細胞において浸潤に寄与していると考えられる因子を同定できている。粘表皮癌病理組織においても、ΔNp63陽性細胞でこれらの浸潤シグナル因子についての発現亢進を確認できており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降では、粘表皮癌培養細胞を用いて、ΔNp63陽性細胞で発現が亢進している浸潤シグナル因子による浸潤メカニズムを、分子細胞生物学的に解析する予定としている。さらに、粘表皮癌培養細胞中のΔNp63陽性細胞の単離方法を確立し、ΔNp63陽性細胞・陰性細胞が生じるメカニズムについても解析を開始する計画である。 病理組織学的解析では、引き続き症例の収集を継続すると同時に、粘表皮癌におけるこれら浸潤シグナル因子の下流となる浸潤シグナルの可視化を試み、ΔNp63陽性細胞の浸潤メカニズム解明に取り組む計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は、粘表皮癌のΔNp63陽性細胞において発現が亢進している浸潤シグナル因子を同定することに重点を置いた。次年度に、この同定された浸潤シグナル因子による粘表皮癌浸潤メカニズム解明のための分子細胞生物学的実験・病理組織学的解析を行うこととしたため、次年度使用額が生じた。次年度は、これら分子細胞生物学的実験、病理組織学的解析を中心に行い、当該の本年度分の助成金を含めて使用する予定である。
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