2023 Fiscal Year Research-status Report
GANPのヒストンアセチル化活性欠損に起因する乳癌サブタイプの臨床病理学的意義
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23K06436
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
桑原 一彦 近畿大学, 大学病院, 講師 (10263469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 康弘 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20754394)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 非遺伝性散発性乳癌 / ヒストンアセチル化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度はa) 乳癌検体と用いたganp遺伝子の異常スプライシングの検出、b) HATドメイン内外を特異的に認識するモノクローナル抗体の樹立、を主な研究内容とした。 a) すでにヒト乳癌細胞株の一部でganp遺伝子の異常スプライシングを生じていることを確認し、HATドメインの活性に影響を及ぼしていることが示唆されている。本年はヒト乳癌検体でも同様にスプライシングの異常が生じているかを検討した。臨床検体は名古屋市立大学乳腺外科の遠山竜也教授から供与頂き、まず30検体を用いてHATドメインのみをシークエンスした。その結果、25%程度のサンプルで異常スプライシングを検出した。手術摘出検体のためRNAの品質がやや悪いと考えられたが、PCRの増幅効率がやや悪いという問題点があるものの、シークエンス解析によりHATドメインに影響することが判明した。 b) a)と関係するが、非遺伝性散発性乳癌の発症に関して、GANPのHATドメインが関与する可能性があり、内在性のHAT活性の異常が重要と考えられる。GANPのHATドメインを特異的に認識するモノクローナル抗体の樹立を目指すことにした。ホルマリン固定パラフィン包埋切片での免疫染色可能な抗体が必要であり、我々が以前より高親和性モノクローナル抗体樹立の目的で免疫動物として用いてきたIg-ganpTgマウスを使用することが望ましいと考えた。現在所属する近畿大学での遺伝子組組換え動物の承認に時間を要し、前任地からのマウスの移動に時間がかかり、さらに現在の飼育環境の問題も一部あったため、免疫操作を行うまでには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度の研究内容として予定した項目のうち、今回の研究の根幹をなす部分である遺伝子改変マウスを使用してのモノクローナル抗体作製の部分が遅延している。その理由として、遺伝子改変マウスの他施設からの導入に時間がかかったこと、導入後のマウスの維持が予想以上に困難で、特にgenotypingに関してこれまでの条件で明瞭なバンドが検出できないという問題が起こり、免疫操作をするための十分なマウス数の確保ができなかったことがあげられる。その他の実験計画に関しては、概ね順調に進んでいる。また令和5年度の計画には入れていなかったが、ヒトΔHAT乳癌細胞株の樹立を開始し、途中経過では有望なクローンが得られている。研究計画に関しては総合的に考えて、やや遅れている、という判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で示したa)に関してはさらに解析数を増やして明瞭な結論が得られるようにしたい。これまではRT-PCRによりHATドメインを増幅してシークエンスをしたが、効率を考えるとRNAシークエンスを考慮するのが望ましい。 b)に関して、マウスの繁殖とgenotypingの改善が行われてきたため、マウスへの免疫操作は行えると考えており、令和6年度には有望なクローンの樹立を目指したい。
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Causes of Carryover |
令和5年度の研究計画のうち、モノクローナル抗体樹立の部分がほとんど進行していないため、それに使用する予定だった研究費は来年度に持ち越すことになった。
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