2023 Fiscal Year Research-status Report
膵癌の浸潤に関与する新規がん抑制遺伝子PLEKHA2の機能解明と治療応用
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23K06443
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
村上 和成 大分大学, 医学部, 教授 (00239485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泥谷 直樹 大分大学, 医学部, 准教授 (80305036)
兒玉 雅明 大分大学, 医学部, 教授 (20332893)
水上 一弘 大分大学, 医学部, 准教授 (60548139)
平下 有香 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (70771955)
木下 慶亮 大分大学, 医学部, 医員 (50867570)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 膵癌 / がん抑制遺伝子 / PLEKHA2 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに、PLEKHA2の発現低下は膵癌細胞にどのような悪性形質をもたらすのかについて検討した。これまで、PLEKHA2低発現膵癌細胞株PANC-1にレンチウイルスを用いて強制発現すると、増殖能が低下することを見出している。この知見を検証するため、ドキシサイクリン(Dox)添加によって誘導性にPLEKHA2を発現する膵癌細胞株PANC-1/PLEKHA2およびそのコントロール細胞株PANC-1/vecを樹立した。Dox添加によりPANC-1/PLEKHA2はPLEKHA2タンパクを発現することをWestern blot法で確認した。さらにPLEKHA2の誘導性発現4日後まで増殖能を観察すると、PANC-1/PLEKHA2はPANC-1/vecに比べて50%程度増殖が抑制されていた。 そこで、PLEKHA2の誘導性発現はどのようなシグナル経路を介して細胞増殖抑制に寄与するのかを調べるために、Dox添加前後のRNAをPANC-1/PLEKHA2とPANC-1/vecから回収した。PANC-1/PLEKHA2において、Dox添加後にPLEKHA2 mRNAが誘導されることは確認した。今後、マイクロアレイを用いた網羅的発現解析とパスウェイ解析を施行する。 次に、PLEKHA2の発現動態と臨床病理学的因子との関連性を検証するために、膵癌切除検体の免疫組織化学を施行した。非腫瘍部の正常膵管上皮および上皮内病変(腺腫および上皮内癌を含む)では細胞質に強いPLEKHA2の発現を認めた。一方、浸潤癌では約6割の症例でPLEKHA2の発現低下を認めた。これまでの検討した症例において、PLEKHA2の発現レベルと患者の性別、年齢、腫瘍の分化度との関連性は認めなかった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標の一つは、PLEKHA2の発現レベルを調整可能な細胞株を樹立して膵癌細胞におけるPLEKHA2の機能的意義を明らかにすることである。Dox添加によりPLEKHA2の発現が誘導される細胞株はすでに樹立した。加えて、発現レベルを抑制する細胞株も現在作製しているところである。次年度以降は、これらの細胞株を用いてこれまでの研究結果の検証とさらなる機能解析を進めていく。 もう一つの目標は、ヒト膵癌組織でのPLEKHA2タンパクの発現動態の検証とその臨床的意義の解明である。免疫組織化学のための抗体選定と条件設定を完了させたのち、免疫組織化学を施行して発現レベルを調べたところ、浸潤癌ではPLEKHA2発現が低下していることが確認できた
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Strategy for Future Research Activity |
今回樹立したDox誘導性PLEKHA2発現細胞株PANC-1/PLEKHA2とは逆に、PLEKHA2を高発現している膵癌細胞株PK-59を用いて、Dox誘導性にPLEKHA2に対するshRNAを発現する細胞株を樹立する。これらの細胞株を用いてin vitroおよびin vivoの実験を施行することで、PLEKHA2の詳細な機能解析が可能になる。これまでPLEKHA2の細胞増殖能への関与に着目してきたが、その他の悪性形質(生存能や運動能、浸潤能等)についても解析を進める。 上述の細胞株のトランスクリプトーム解析を施行し、得られた発現プロファイルデータをパスウェイ解析することにより、PLEKHA2が関わるシグナル経路を同定する。さらに、シグナル経路上でバイオマーカーあるいは治療標的となりうる分子を抽出する。 ヒト膵癌組織におけるPLEKHA2の免疫組織化学解析を継続して、発現動態と臨床病理学的因子との関連性を検討する。とくに、術後経過が把握できている症例を多数解析することで、予後との関連性を明らかにする
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Causes of Carryover |
今年度実施した細胞生物学的実験および免疫組織化学に使用したすべての物品は、他の予算で購入した余剰分を用いることができたため。また、次年度以降に予定している実験計画のうち、トランスクリプトーム解析およびパスウェイ解析については当初の想定以上の費用を要することが判明したため、今年度分を次年度に回した
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Research Products
(10 results)