2023 Fiscal Year Research-status Report
Maspinが癌患者の不良予後に関与する分子機構の解明
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23K06462
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
梅北 善久 鳥取大学, 医学部, 教授 (80244226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂部 友彦 鳥取大学, 医学部, 講師 (50639747)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞内局在 / 膵管癌 / 口腔扁平上皮癌 / 脳腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、がん抑制遺伝子の一種であるとされるMammary serine protease inhibitor (Maspin)の細胞内局在に着目した解析によって、細胞質に優勢的にMaspinを発現する(cytMaspin)患者は有意に予後不良であることを報告してきた。このことから、癌に対するMaspinの機能はその細胞内局在によって制御されており、抑制的にも促進的にも機能することが推察されるが、詳細は未だ不明である。本研究の目的は、固形悪性腫瘍において細胞内局在依存的なMaspinの機能を臓器横断的に解析することで、その制御メカニズムを利用した新規癌治療薬開発に応用することである。 本年度は、膵管癌細胞株、口腔扁平上皮癌細胞株、脳腫瘍細胞株を用いたMaspin発現及び細胞内局在の解析を実施した。膵管癌細胞株における解析では、Maspin非発現株4株、Maspin低発現株2株、Maspin高発現株8株を同定した。また、Maspin発現株のうち、AsPC-1, S2-028はcytMaspin型、残りの6株はpanMaspin型の細胞内局在を示すことを明らかにした。口腔扁平上皮癌細胞株における予備的な検討では、EGF処理によるリン酸化Maspinの増加、核での発現増加を示す結果を得られた。さらに、脳腫瘍細胞株における発現解析では、解析を実施した細胞株でMaspin発現が抑制されていること、アデノウイルスによる遺伝子導入実験では、その細胞内局在は細胞ごとに異なっており、cytMaspin型とpanMaspin型の局在を示すことが明らかとなった。今後は、これらの細胞株を用いてMaspinの翻訳後修飾と核移行の関連性および細胞内局在制御機構の解明を実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は細胞内依存的なMaspinの機能解析を実施するとともに、Phos-tag SDS-PAGEによるMaspinのリン酸化動態と細胞内局在の関連を明らかにすることを目標としていたが、実験に使用できる時間の関係上、後者は実行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
膵管癌細胞株については、SUIT-2を親株とする一連の派生株においてもMaspin発現及び細胞内局在が変化していることから、これらの株間の違いを比較することでMaspin細胞内局在と癌の悪性度に関わる特性の関連性を検討する。また、口腔扁平上皮癌細胞株についてはMaspinリン酸化動態を解析することで、Maspinの核移行に関わるリン酸化プロテインキナーゼの同定を目指す。さらに、脳腫瘍細胞株を用いたMaspin過剰発現によって、悪性腫瘍に対するMaspinの機能とその細胞内局在の関連を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
Maspinの細胞内局在を解析する際のフラクションアッセイやリン酸化タンパクを検出するPhos-tag SDS-PAGEの手技的な条件検討などに時間がかかってしまったために、消耗品代などが予定より少額となった。これらの予算は、研究計画に従って次年度の分子生物学的解析に使用する予定である。
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