2023 Fiscal Year Research-status Report
Growth factor-mediated regulation of repair and fibrosis in liver injury and its therapeutic application
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23K06489
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
土屋 勇一 東邦大学, 薬学部, 准教授 (10307738)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | FGF18 / 肝線維化 / 肝星細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝線維化は様々な慢性肝疾患により引き起こされ、患者の予後に大きく影響する。しかし抗線維化薬の開発は遅れていることから、肝線維化メカニズムの解明と治療標的の同定は急務である。 我々は様々な遺伝子改変マウスおよび病態モデルを用いた解析により、線維化が誘導された肝臓では線維芽細胞増殖因子ファミリーの一つであるFGF18の発現が上昇することを見出した。肝臓におけるFGF18の過剰発現は肝星細胞(HSCs)を増加させ、線維化関連遺伝子の発現上昇と肝線維化を誘導した。一方でin vitroにおいては、FGF18はHSCsの増殖を誘導したが、線維化関連遺伝子の発現を抑制した。したがってin vivoにおいては、FGF18により増殖したHSCsが、他の細胞種により産生される因子によって活性化されることで、線維化関連遺伝子を発現して肝線維化を誘導すると推測された。また各種肝疾患患者の肝生検標本において、線維化マーカーの遺伝子発現とFGF18の遺伝子発現に正の相関が認められた。したがってヒトにおいてもFGF18が肝線維化を誘導している可能性が示唆され、肝線維化の新たな治療標的になると推測された(Tsuchiya et al., Nat Commun, 2023)。 FGF18は肝線維化だけでなく、各種のがんにおいても発現が上昇することが知られている。FGF18は分泌タンパク質であり血中に放出される可能性があることから、血清バイオマーカーとして各種疾患の早期診断に利用できる可能性がある。我々はヒトFGF18を高感度に測定できるELISAキットを独自に開発した。このELISAキットは各種の株化がん細胞培養上清のFGF18を検出できたことから、様々な用途への応用が期待できる(Tsuchiya et al., BBRC, 2023)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は肝細胞でアポトーシスの亢進しているマウスに、コリン欠乏エチオニン添加食を投与して肝線維化を誘導したところ、対照マウスと比較して肝線維化が亢進することを見出した。Bulk-RNA-seqの解析から、TGFβを含むさまざまな遺伝子の発現上昇が認められたが、これまで肝線維化への関与が報告されていないFGF18に注目した。FGF18は線維化が誘導された肝臓で発現が上昇しており、FGF18の主な産生細胞は肝細胞と肝星細胞(HSCs)であった。FGF18が肝線維化に及ぼす影響を調べるため、肝細胞特異的FGF18過剰発現マウスを作製した。このマウスは通常飼育環境下で肝臓が約1.5倍に腫大し、肝線維化が亢進していたことから、FGF18の過剰発現だけで肝線維化を誘導できることが明らかになった。single cell RNA-seq解析の結果から、肝細胞特異的FGF18過剰発現マウス肝では、HSCsが増加しており、それに伴い肝線維化関連遺伝子の発現が上昇していた。野生型マウスから単離したHSCsを用いたin vitroの実験から、FGF18はTGFβとは異なり、collagenなどの線維化関連遺伝子の発現を上昇させないものの、HSCsの増殖を誘導することが明らかとなった。また肝生検を行ったヒト肝臓の解析から、肝臓の局所における線維化マーカーの遺伝子発現とFGF18の発現には正の相関が認められた。以上より、FGF18はHSCsの増殖を促進することで肝線維化を誘導することが明らかとなった。 FGF18が各種疾患における血清バイオマーカーとして利用できるかを検討するため、学内外の臨床教室と共同で、各種肝疾患患者の血清FGF18を測定する臨床研究を行っている。またバイオバンクジャパンから検体の供与を受け、がん患者の血清FGF18を測定する臨床研究も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
FGF18単独ではHSCsの増殖は誘導できるが活性化は抑制されることから、in vivoの環境では、他の細胞種により産生される別の因子がHSCsの活性化を誘導していると推測される。今後はsingle cell RNA-seq解析の結果に基づいて、複数の候補因子およびその産生細胞を候補として選び、新たな遺伝子改変マウスを用いてin vitroおよびin vivoの研究を進め、肝線維化の全容を明らかにする。 肝線維化治療薬の開発が遅れている理由の一つとして、適切な病態モデル動物の不足が挙げられる。現在頻用されている肝線維化モデル動物としては、四塩化炭素の腹腔内投与や総胆管結索など、炎症に依存した線維化モデルが主流である。これらの系では炎症誘導自体が煩雑かつ不安定なだけでなく、抗炎症薬の効果が過剰に評価され、線維化のプロセスに直接アプローチすることが困難である。我々が作製した肝細胞特異的FGF18過剰発現マウスは炎症を誘導する必要がなく、肝線維化のプロセスに直接アプローチできることから、新規の病態モデル動物として利用可能である。今後はこのマウスを用いて抗線維化薬のスクリーニングを行う。 また我々はこれまでの研究過程で、特定の急性肝疾患モデルにおいては、肝臓のFGF18発現が上昇しないにもかかわらず血清FGF18が上昇すること、このとき他臓器でFGF18の発現が上昇することを見出している。このことは肝臓の異常を検知して他臓器が応答する新規の臓器連関メカニズムが存在することを意味している。今後はこの新規臓器連関のメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
東邦大学医学部から東邦大学薬学部への遺伝子改変マウスの移送に遅れが生じ、予算を執行できなかったため。次年度使用額は、令和6年度に行う遺伝子改変マウスの移送に全額を使用する。
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[Journal Article] Fibroblast growth factor 18 stimulates the proliferation of hepatic stellate cells, thereby inducing liver fibrosis2023
Author(s)
Tsuchiya Y, Seki T, Kobayashi K, Komazawa-Sakon S, Shichino S, Nishina T, Fukuhara K, Ikejima K, Nagai H, Igarashi Y, Ueha S, Oikawa A, Tsurusaki S, Yamazaki S, Nishiyama C, Mikami T, Yagita H, Okumura K, Kido T, Miyajima A, Matsushima K, Imasaka M, Araki K, Imamura T, Ohmuraya M, Tanaka M, Nakano H
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 14
Pages: 6304
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A high-sensitivity ELISA for detection of human FGF18 in culture supernatants from tumor cell lines2023
Author(s)
Tsuchiya Y, Komazawa-Sakon S, Tanaka M, Kanokogi T, Moriwaki K, Akiba H, Yagita H, Okumura K, Entzminger K.C., Okumura C.J., Maruyama T, Nakano H
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: 675
Pages: 71~77
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Fibroblast growth factor 18 stimulates the proliferation of hepatic stellate cells, thereby inducing liver fibrosis2024
Author(s)
Seki T, Tsuchiya Y, Shichino S, Nishina T, Yamazaki S, Matsushima K, Yagita H, Okumura K, Tanaka M, Nakano H
Organizer
第52回免疫学会学術集会