2023 Fiscal Year Research-status Report
ラクトペルオキシダーゼに着目した乾癬の病態形成機構の解明と治療法の確立
Project/Area Number |
23K06502
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
鈴木 章一 帝京大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40253695)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ラクトペルオキシダーゼ / ヒポチオシアン酸 / 乾癬 / チオシアネート |
Outline of Annual Research Achievements |
ラクトペルオキシダーゼ(LPO)は主に唾液腺や粘液腺で分泌される酵素タンパク質であるが、イミキモドを用いた乾癬モデルマウスの病変皮膚組織にLPOが強く発現されているという発見をし、乾癬の病態形成においてLPOがどのような役割を担っているのか明らかにすることを目的として研究を行っている。これまでのin vitroの研究からLPOの酵素反応産物であるヒポチオシアン酸(HOSCN)はIL-8やIL-6などの炎症性サイトカインの発現を誘導することを見いだしてきたが、今年度(令和5年度)も引き続きin vitroの実験を集中的に行い、HOSCNが皮膚の細胞であるケラチノサイト(HaCaT細胞株)に及ぼす影響を解析した。培養液にグルコースオキシダーゼとLPOを添加し、HOSCNで持続的に細胞を刺激した後、様々なシグナル伝達分子の活性化の状態をウェスタンブロット法を用いて調べた。この結果、Erkやp38といった炎症性サイトカイン遺伝子の発現に関与するMAPキナーゼが活性化されることが再確認された。次に、乾癬の病態形成に関与していると考えられているIL-6のシグナル伝達に対するHOSCNの作用を解析したところ、HOSCNの濃度依存的にstat3の活性化が抑制されることが分かった。この抑制効果はstat3のみならず、IL-6によるAKTの活性化においても観察された。これらの結果からMAPキナーゼを介した炎症反応誘導という悪玉的な側面と、stat3やAKTの活性化抑制という善玉的なはたらきの両方の作用があることが示唆された。今後は両方の側面から乾癬におけるLPOの役割を明らかにして行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vitroの実験から予想に反して善玉的な働きが示唆されたため、当初予定していた計画よりも多くのin vitroの実験系が必要となったため、当初の研究計画どおりいかなくなっている。この理由から全体としてやや送れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度もHOSCNのケラチノサイトに対する作用を明らかにするために、in vitroでの研究を行う予定である。HOSCNによって活性化されるMAPキナーゼはオートファジーを抑制するシグナル伝達分子であることが多数報告されており、また、オートファジーの形成と乾癬の病態形成との因果関係が示唆されることから、オートファジーに着目しながら研究を進める予定である。また同時に、今年度得られたHOSCNによるstat3やAKTの活性化抑制という結果の意義を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度使用した試薬、器具などの消耗品は既に所有していたものが多かったこととマウスを用いた実験が進まなかったことが主な理由である。今年度使用予定であったお金を来年度に抗体等の高額消耗品に当てる予定である。
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