2023 Fiscal Year Research-status Report
疾病よる転写因子IRF8の発現変化の分子メカニズムの解明
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23K06586
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
奥田 博史 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10629215)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 単球 / 分化制御 / IRF8 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子IRF8は単球や樹状細胞を含む単核貪食細胞系分化のマスター転写因子として知られている。これまでに私たちはミエロイド前駆細胞のIRF8発現量が異なることで、樹状細胞、単球、好中球いずれに分化するかが決定されることを示してきた。研究代表者は、様々な前駆細胞においてIRF8発現量が正常のマウスの前駆細胞のIRF8発現量より減少する独自のIrf8エンハンサー欠損マウスなどを用い、IRF8のさらに精密な発現量の違いによって、異なる前駆細胞から異なる性質の単球が産生される可能性を示す予備実験データを得た。本研究では、単球の分化に影響を及ぼすIRF8発現変化の分子機構とその免疫学的意義を解明する。研究計画1年目において、独自のIrf8エンハンサー欠損マウスから単離した前駆細胞をマウスに移植し、フローサイトメトリー解析によって前駆細胞からの単球分化経路を推定することを試みた。その結果、IRF8発現が減少している前駆細胞からは、古典的単球よりも炎症時に見いだされる非古典的単球の産生が増加していることが明らかとなった。今後は、この非古典的単球の産生経路を詳細に解析していく予定である。また現在、疾患時における前駆細胞の分化能を検証するため、感染症を模したさまざまな刺激をマウスに与え、フローサイトメトリー解析によって各種免疫細胞やその前駆細胞の割合、IRF8の発現の解析を試みている。本研究で得られる成果は、これまで考えられていたIRF8の分化段階における作用点を修正し単球分化の新しい調節機構を示すのみならず、IRF8の発現制御を切り口とした疾患に対する免疫療法の開発に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は研究期間内に達成するべき3つの目標のうち2つの項目について、順調に研究成果を得ることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況の項目に記載した項目を基に、2年目以降は達成するべき3つの目標のうち2つの研究項目について1年目の解析より詳細に解析することで、IRF8発現が変化した前駆細胞から産生される単球の種類や分化経路を同定する。さらには3つ目の項目についても、フローサイトメトリー解析の際にRNA-seqやATAC-seqのサンプルを調製しており、今後これらの解析も行う。
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Causes of Carryover |
本年度の研究には申請時にすでに購入した試薬等で申請者が計画していた研究成果が得られたこともあり、1年目の使用額が研究計画に記載した金額より少額になった。しかし、2年目以降の研究の進展には、マウスの移植実験に必要なマウス生体や、フローサイトメトリーに必要な試薬などの購入に1年目の未使用額が必要となってくると予想している。
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