2023 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌による n-6系不飽和脂肪酸代謝産物の腸管炎症おける病態生理学的役割の解明
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23K06596
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡部 誠 京都大学, 医学研究科, 医員 (80886953)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | KetoC / リノール酸 / 炎症性腸疾患 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
In vivoの実験では、DSS腸炎マウスに①リノール酸、②リノール酸代謝産物のKetoC、③DMSO(コントロール)を注腸したところ、③群に比較して①群、②群のマウスでは有意に腸炎抑制効果が見られた。 DSS投与終了後5日目に、腸内細菌を解析したところ、①群に比較して②③群はLactobacillus属やLachnospiraceae NK4A136 groupの割合が高く、Streptococcus属の有合が低かった。ところが、DSS投与前に抗生剤を用いて同様の実験を行ったところ、①群に比較して③群では、Lactobacillus属やLachnospiraceae NK4A136 groupの割合が高くやはりStreptococcus属の割合が低かった。しかしながら、②群は①群と同様に③群よりLactobacillus属やLachnospiraceae NK4A136 groupの割合が低く、Streptococcus属の有合が高かった。 これらの結果から、抗炎症に関わる細菌として、Lactobacillus属やLachnospiraceae NK4A136 group属、Streptococcus属が候補と考えられた。リノール酸はこれら特定の腸内細菌で代謝されKetoCを含めた代謝産物が抗炎症効果を示すことが分かった。 また、In vitroの実験ではすでにKetoCがマクロファージに抗炎症効果を示すことは見いだしてきたが、フローサイトメトリーで、炎症に関わる細胞表面のTLR4の発現には影響を与えないことを確認した。さらに細胞内シグナルのNF-κB経路も抑制されなかったが、MAPキナーゼ(ERK、p38、JNK)は抑制することをウエスタンブロット法で確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年では腸内細菌叢の解析のみならず、メタボローム解析まで実施する予定であったが、腸内細菌細菌叢の解析とメタボローム解析に必要なマウスの便の採取に難渋し、解析に必要な便を採取するために複数回、実験を繰り返したことと、DSS腸炎モデルマウスにおけるDSS投与量の条件設定に時間を要した。結果的には、メタボローム解析にたり得る便は採取できず、腸内細菌叢のみの解析となった。そのため抗炎症に関与する腸内細菌の候補までが挙げられたが、それらを無菌マウスに投与して、腸炎抑制効果を確認する実験までには至らなかった。本研究では、リノール酸やKetoCに着目しているが、KetoC以外の代謝産物に関しても検討が必要と考え、その作成にも着手し、in vitroとin vivoの両方における実験計画を検討中である。またin vitroの実験に関しては、リノール酸の代謝産物のKetoCが抗炎症性効果を示すメカニズムをウエスタンブロット法やフローサイトメトリー法で解析し、結果としては、非常に有用な結果を得ることが出来たが、実験の条件検討に時間がかかった。ただし、in vitroの実験に関しては予定通りの進捗と考えている。さらにマウスの骨髄由来マクロファージを用いて、KetoCの抗炎症効果を確認するため、RNAシークエンス解析を検討しており、実験計画を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivo実験に関しては、腸内細菌の解析結果から考えられる抗炎症に関わる候補の腸内細菌を無菌マウスに投与し、便採取や腸管回収を行うが、昨年度の実験で、便回収にかかる時間や 解析手法に関しては習得したので、可能な限り、マウス検体数を多くし、精度の高い実験を繰り返す予定である。また、In vitroの実験に関しては、マクロファージのシグナル伝達機構でMAPキナーゼ経路の関与を見いだしたが、それ以外の経路もウエスタンブロット法や、フローサイトメトリーで確認する必要がある。さらに、抗炎症にかかわるタンパク質として、ELISA法で一つずつ解析していたが、フローサイトメトリーのCBA手法を用いて同時に複数のタンパク質を解析することで時間短縮が期待できるため、本年は、積極的に実験にCBA手法を取り入れる予定である。また 昨年度の実験結果を踏まえて、抗炎症に関わる経路としてミトコンドリアを介したimmunometabolismの実験(ミトストレスアッセイ等)も考慮している。
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Causes of Carryover |
前年度に使用していた物品を可能な限り使用し、プレリミナリーな実験に関しては、経費の負担を減らすように実験を行っていたため繰り越し金額が発生した。本年度の実験予算に関しては、昨年得られた実験結果から、腸内細菌の解析のみならず、メタボローム解析も繰り返し行うことを検討しており、条件検討も含めると、支出が昨年より大幅に増えることが予想される。また、タンパク質の測定に関して、同時に複数個測定できるCBA手法をフローサイトメトリーで行う予定であるが、通常のELISA法よりも費用がかかることを想定している。さらには、昨年度の実験結果を踏まえて、抗炎症に関わる経路としてミトコンドリアを介したimmunometabolismの実験も考慮しており、繰り越し金額を含めてすべて使用することになると考えている。
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