2023 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of the transcriptional cofactor YAP in the pathogenesis of hepatocellular carcinoma
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23K06628
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 好海 (内田好海) 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (40716792)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 肝細胞がん / Hippo経路 / Yes-associated protein |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞がん(HCC)は予後不良ながんであり、新たな治療法の開発が喫緊の課題となっている。近年、転写共役因子YAPおよびそのホモログであるTAZがHCC発症に関連することが報告され新たな治療標的候補として着目されている。ヒトHCC患者では、その6割でYAP/TAZの異常な核内蓄積がみられること、YAP/TAZの蓄積が患者の予後と相関することが報告されている。しかしながら、ヒトのがん患者ではYAPやTAZを活性化するようなゲノム変異はほとんど見つからず、この矛盾は世界的な問いとなっている。本研究では、マウスの肝臓において転写共役因子YAPを肝細胞にモザイク状に発現させる系を用いて、YAP活性化によるHCC発症機構の解析を行っている。現在までに、Hydrodynamic tail vein injection実験または肝細胞移植実験によるHCC発症系を確立した。当初の研究計画に従い、YAP誘導性のHCCを用いて網羅的なゲノム配列解析、エピゲノム解析、遺伝子発現解析、メタボローム解析を行った。その結果、YAP誘導性HCC特異的なゲノム変化は観察されなかった。一方でYAP誘導性HCCに特異的なDNAメチル化変化や遺伝子発現変化を見出した。活性化YAP導入後4ヶ月の肝臓を用いて組織解析を進めたところ、肝臓を構成する細胞のダイナミックな変化を認めた。このような変化が活性化YAP導入後1ヶ月のHCC未発症の肝臓でも観察されるのか検討を行った。また、肝細胞移植実験に関しては、レシピエントマウスの肝臓から活性化YAP導入肝細胞をFACSによって単離する方法と、ドナーマウスの脾臓への移植方法を検討し、移植後およそ1年で活性化YAP導入肝細胞を移植した正常な肝臓においてもHCCを誘導できることが明らかになった。これらの組織解析に必要な多重染色法等の解析系の確立も順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り肝細胞がん誘導系を確立することができ、各種オミクス解析も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き取得したオミクスデータの解析を進め、リアルタイムPCRや免疫染色等による検証実験を行う。肝細胞におけるYAPの活性化がどのように肝臓構成細胞を変化させるのか、組織染色やシングルセル解析を用いて評価する。マウスを用いた実験系により見出された知見について、ヒトがん患者のデータベースを用いた検証を行う。
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