2023 Fiscal Year Research-status Report
ZFATによるゲノム制御機構とその破綻による細胞癌化メカニズムの解明
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23K06643
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
白澤 専二 福岡大学, 医学部, 教授 (10253535)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ZFAT / 細胞周期 / DNAダメージ修復 / びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
ZFATは高度に保存された18個のZincフィンガードメインを有するDNA結合タンパク質である。ZFATは特定の遺伝子のプロモーター領域に結合し、そのmRNA転写を制御するとともに、セントロメアにおけるノンコーディングRNAの転写を制御する。本研究では、ZFAT発現抑制による細胞周期停止およびDNAダメージ蓄積のメカニズムを解明することにより、ZFATによるゲノム制御機構を明らかにすること、ならびにZFATの遺伝子異常によるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後生存率低下の機序を明らかにすることを目的とする。 2023年度には、ZFATのChIP-seq解析、およびZFAT発現抑制細胞におけるRNA-seq解析を施行し、ZFATが直接発現を制御し、細胞周期制御、またはDNAダメージ修復に関わる複数の遺伝子を同定した。現在、これらのZFAT標的遺伝子の機能解析を進めている。 また、DLBCL細胞におけるZFATの機能解明においては、ヒトDLBCL細胞株であるSUDHL-4、Pfeiifer、Toledo細胞において、これまで知られていた190kDa以外に、複数のZFATアイソフォームが発現し、細胞株ごとにその発現パターンに違いがあることが明らかとなった。これらの細胞株において、レンチウィルス感染系を確立し、ドキシサイクリン誘導型Cas9ヌクレアーゼとsgRNA発現によるZFAT発現抑制細胞株を樹立した。SUDHL-4およびPfeiifer細胞ではZFAT発現低下により細胞増殖が抑制されたが、Toledo細胞ではZFAT発現低下は細胞増殖速度に影響を与えなかった。ZFATアイソフォームの発現パターンとZFAT発現抑制による細胞増殖への影響に関連があることが示唆された。これらのDLBCL細胞株においてZFATの生理的役割が異なっている可能性が示唆され、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画初年度において、細胞周期制御、またはDNAダメージ修復に関わる複数のZFAT標的遺伝子を同定することができた。これらの知見は、ZFATが転写制御因子として、細胞周期、ならびにDNAダメージ修復に重要な役割を果たしていることを示唆するものである。 また、ZFAT発現低下がSUDHL-4およびPfeiffer細胞の細胞増殖を抑制したことは、DLBCL細胞におけるZFATの機能的重要性を示唆するものであり、その意義は大きいと考える。 これらのことから本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画初年度に同定したZFAT標的遺伝子のなかには、これまでに機能が調べられていない因子も複数含まれているので、これらの遺伝子のZFATによる発現制御の詳細な分子メカニズム、および生理的重要性を明らかにしていく。また、ZFATは転写制御因子以外の機能を有することも明らかにされていることから、転写制御を介さない細胞周期制御およびDNAダメージ修復へのZFATの関与についても検討を進めていく。 DLBCL細胞株におけるZFAT発現低下による細胞増殖抑制の機序について、アポトーシス、細胞周期、DNAダメージ修復の視点から、検討を進めていく。また、ヒトDLBCL患者において同定されたZFAT遺伝子変異を導入したDLBCL細胞株を樹立し、その影響を明らかにする。
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