2023 Fiscal Year Research-status Report
早期がんにおける匂いを利用した生物診断の科学的機構の解明
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23K06733
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Research Institution | Kanagawa Institute of Industrial Sclence and Technology |
Principal Investigator |
三村 久敏 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 人工細胞膜システムグループ, 研究員(任期有) (30463904)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 早期がん / 匂い物質 / 嗅覚受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、昆虫嗅覚受容体をアレイ化したデバイスを作製し、それらの匂い物質への反応性を調べることにより、がん細胞に関連した匂いの探索と、そこに含まれる匂い物質の同定を目的とする。2023年度は、下記項目 (1)、 (2) に取り組み、昆虫嗅覚受容体のアレイ化と、匂い物質への昆虫嗅覚受容体の反応を検出可能なデバイスを作製する。2024年度以降は、がん細胞に関連した匂いを構成する匂い物質を同定するため、作製したデバイスを用いて、がん細胞の培養液に対する昆虫嗅覚受容体の反応性を調べる。 (1) 昆虫嗅覚受容体のアレイ化と活性検出に用いるデバイスの作製 匂い物質に反応した昆虫嗅覚受容体の活性を検出するため、昆虫嗅覚受容体を発現する細胞をアレイ化するデバイスの作製と、それを用いた測定条件の検討を行った。比較のため、プレートリーダーを用いて、マイクロプレートで培養した細胞についても活性を測定した。アレイ化する細胞の濃度を検討することにより、匂い物質への反応の検出感度の向上が認められた。アレイ化操作を行う際の湿度をコントロールすることにより、匂い物質へのアレイ化された細胞の反応安定性が向上した。 (2) デバイス上にアレイ化した昆虫嗅覚受容体の活性測定手法の検討 デバイス上にアレイ化した昆虫嗅覚受容体の活性を安定的に測定する手法を確立するため、匂い物質を含む溶液のデバイスへの添加方法の検討を行った。デバイス上でのアレイ化数と溶液の添加回数の関係を調べたところ、両者の最適な条件を見いだした。匂い物質を含む溶液を複数回に分けて加えることにより、安定した測定結果が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的を達成するため、昆虫嗅覚受容体をアレイ化したデバイスを作製し、アレイ化と活性測定を行うための実験条件を検討した。さらに、デバイス上にアレイ化した細胞への匂い物質を含む溶液の添加方法を検討した。これらの検討により、アレイ化した嗅覚受容体の活性を再現性良く安定的に測定する手法を確立した。現在は、複数種類の嗅覚受容体をアレイ化したデバイスを作製し、匂い物質を含む溶液を添加した際の基礎的な反応データの測定を進めている。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、複数種類の嗅覚受容体からなるアレイを作製し、匂い物質に対する基礎的な反応データの取得を進める。複数の匂い物質を混合した溶液への反応を詳細に調べるなど、より高度な反応データの取得も試みる。細胞培養液に匂い物質を添加し、これを用いて反応データを取得する。通常の溶液を用いた反応データとの比較を通して、細胞培養液を測定対象とする影響についても予備的な評価を行う。
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