2023 Fiscal Year Research-status Report
A study on human amygdala using intracranial EEG and fMRI
Project/Area Number |
23K06791
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯高 哲也 名古屋大学, 脳とこころの研究センター(保健), 教授 (70324366)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 扁桃体 / fMRI / 顔認知 / 社会脳 / 時間周波数解析 / 模倣 |
Outline of Annual Research Achievements |
表情認知とその模倣について、健常被験者を対象としたfMRI実験を行った。さらに難治性てんかん患者の術前に頭蓋内電極(iEEG)から脳波を計測し、扁桃体の電気生理学的反応を調べた。仮説としては、表情を模倣している時には、顔刺激が提示されなくとも扁桃体の活動が亢進すると考えた。 課題では表情変化を伴う動画が呈示され、被験者はそれを見るように指示された(Movie課題)。その後に顔のシルエットが呈示され、被験者は直前に見た表情と同じ表情を模倣した(Imitation課題)。表情にはNegative(怒り・嫌悪)、Positive(喜び)、Neutral(閉眼)の3条件があった。fMRI実験では18名の被験者が参加し、データはSPM12により解析を行った。iEEGでは6名の難治性てんかん患者が実験に参加し、データはEEGLABにより時間周波数解析を行った。 fMRI実験の結果では、Imitation課題における扁桃体の賦活はNegativeおよびPositive条件においてNeutral条件よりも有意に強かった(p=0.001, uncorrected)。iEEGの解析結果では、扁桃体活動はNegative条件とPositive条件でNeutral条件よりも有意に強かった(FDR, p<0.05)。扁桃体の活動は高ガンマ帯域において出現し、刺激提示後500ミリ秒付近から始まっていた。 本研究は表情が提示されなくても、模倣するだけで扁桃体が賦活されることを示している。加えてfMRI実験とiEEG実験の両方において同様の結果が得られた。顔面の皮膚や筋肉は表情模倣時に動くことから、その感覚情報が扁桃体へ刺激として入力している可能性を示唆している。本研究結果はヒトが表情を作る行為によって、扁桃体の活動が誘発されることを、血行動態と電気生理の両方から解明した点に新奇性があった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究成果としては、上述したようにfMRIとiEEGで表情模倣課題を行い、その両方で類似した扁桃体活動を得ることができた。この結果は学術誌Cerebral Cortex(IF=3.7)2024年1月号に掲載された。
Hemodynamic and electrophysiological responses of the human amygdala during face imitation: a study using functional MRI and intracranial EEG, Tetsuya Iidaka and others, Cerebral Cortex, Volume 34, Issue 1, January 2024
従って本研究課題の目的である、扁桃体における血行動態的変化と電気生理学的変化の類似性を示したという点において、研究目的に添った成果である。研究期間の1年目において、このような成果を得ることができたということは、進捗状況としては計画以上に進んでいると判断することができる。 一方で問題点としては、次の実験課題を遂行するための準備がやや遅れているということがあげられる。その原因として、この数年来共同研究を続けてきた名大病院脳神経外科の医師が退職したことがある。これにより新規に難治性てんかん患者を被験者としてリクルートすることが難しくなっている。このため現在は新たに共同研究者を探しつつ、新規の実験課題の準備を進めている所である。従って全体としては進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定としては、今年度に得られた研究結果を次年度に学会発表することがあげられる。そのために国際ヒト脳機能マッピング学会(2024年6月23日~27日:韓国・ソウル市)に抄録を提出して、既にポスター発表として受理されている。次に新規の難治性てんかん患者を被験者としてリクルートするため、名大病院脳神経外科において新たな共同研究者を探す予定である。現時点では昨年度の実験において、実験助手をしていただいた脳外科医に依頼する予定である。それに伴い新たな研究チームで研究倫理申請を行う必要があり、現在はその準備をしているところである。
|
Causes of Carryover |
学術雑誌への投稿掲載料が高額(30~40万円程度)になることを予想していたが、今回の研究論文出版に対しては費用がかからなかったことが大きな要因である。また国際学会への参加をしなかったことも旅費が少なくなった原因である。
|
Research Products
(1 results)