2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K06826
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邊 征爾 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (70633577)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | TDP-43 / 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / アグリソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は単量体TDP-43の凝集体形成における微小管系および液-液相分離の及ぼす影響を検討し、マウス神経芽腫細胞株Neuro2aにおいて、単量体TDP-43が主に微小管系に依存して凝集体を形成することを見出した。これと一致して、微小管の脱重合を促進するノコダゾールにより単量体TDP-43の凝集体の大きさは顕著に減少し、微小管依存的に形成される細胞内封入体アグリソームのマーカー分子と単量体TDP-43の凝集体が共局在を示した。一方で、液-液相分離を阻害する1,6-ヘキサンジオールによっては、単量体TDP-43は影響を受けなかった。そこで、単量体TDP-43の構成分子から凝集体形成に関与する分子を同定するため、界面活性剤不溶の成分を単離して質量分析によって網羅的に成分の同定を行った。その結果、熱ショックタンパク質HSP70やTDP-43と相互作用することが知られる各種のRNA結合タンパク質群、および多くのALS原因遺伝子産物が含まれており、ALS患者由来の封入体構成分子もその大多数が共通して含まれることが判明した。しかしながら、同定できた分子数が1000以上存在し、単量体TDP-43の凝集体形成に直接的に関与する分子を同定するには至らなかった。早期から単量体TDP-43の凝集体に含まれる分子は、より凝集体の核構造に含まれやすく、また凝集体形成に直接的に関与することが想定されるため、より強力な界面活性剤に変更して単量体TDP-43の凝集体の核構造に含まれる分子を同様に同定する実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、単量体TDP-43の凝集体形成に微小管系の寄与が大きいこと、および単量体TDP-43の凝集体形成において非常に多くの分子で不溶性が増加することが判明した。興味深いことに、多くのALSに関連する分子において不溶化が認められたことから、TDP-43の凝集体形成はALSの病態においても重要な変化であることが示唆された。質量分析で多くの分子が同定できた一方、その数が非常に多く絞り込みが困難であることから、来年度はより直接的に凝集体に関与する分子の同定を第一に検討してく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
概要で述べたように、質量分析において同定できた分子数が膨大であったことから、次年度以降は単量体TDP-43の凝集体により直接的に関与する分子の同定を目指す。単量体TDP-43凝集体は、その成熟化に伴って不溶性が増強され、より強力な界面活性剤に対しても抵抗性を持つことが知られる。そこで、界面活性剤をより強力なものに変更して同様の質量分析を実施し、凝集体の核構造に含まれる分子を同定することを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は質量分析等の実験がほぼ支障なく進展した一方、生化学実験の一部等を完遂することができず、次年度への繰り越しとなった。次年度は残されている生化学実験、特にアグリソーム関連因子のノックダウンが凝集体形成に与える影響の検討を行うほか、今回得られた質量分析結果も追加の実験と併せてより詳細な解析を行う計画であり、そのための支出に供する。
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Research Products
(18 results)