2023 Fiscal Year Research-status Report
Revealing the functional mechanisms of neuronal protective peptides for developing a treatment for Alzheimer's disease.
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23K06840
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
羽田 沙緒里 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40581012)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
孤発性アルツハイマー病(AD)は、発症原因とされるアミロイドβ(Aβ)が形成する多様な可溶性オリゴマーが、様々な標的分子を介して神経傷害を引き起こし、時間をかけて徐々に神経変性を進行させる疾患である。認知症の予防・治療法開発は喫緊の課題であるが、Aβオリゴマーの神経機能障害を引き起こす複雑性が、ADの発症機構の解明と治療薬開発を困難にしていると考えられる。申請者は脳・神経系細胞のミトコンドリアを活性化することでAβオリゴマーの神経毒性を抑制するp3-Alcβペプチドを見出した。AD患者では脳内Aβの蓄積が進む一方で、ミトコンドリア機能の低下し、神経保護機能を持つp3-Alcβの脳脊髄液中の量は減少する。本研究は、p3-Alcβが神経保護作用を示す分子機構を解明することにより、ADを含む神経変性疾患の治療法開発に資する知見を得ることを目的とする。今年度は、p3-AlcβがAβオリゴマーによる毒性から神経細胞を保護する作用メカニズムとして、カルシウムイオンに着目し解析を実施した。Aβオリゴマーは細胞内への過剰なカルシウムイオンの流入を引き起こし、これが神経変性の引き金となることが報告されている。解析の結果、p3-AlcβはAβオリゴマーによるNMDA型グルタミン酸受容体の異常活性化を介したカルシウムの過剰な流入を抑制していることを見出した。また、細胞内においてミトコンドリアを活性化させるシグナル伝達経路について解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p3-Alcβの機能解明のための実験データを蓄積することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
p3-Alcβが神経細胞のNMDA受容体を介して、カルシウムの過剰流入を抑制していることは明らかになったが、神経細胞の活性化とAβオリゴマーによる毒性からの保護機能を発現する機構について、まだ十分に解明できていないため、作用メカニズムの詳細について解析を続ける。また、神経細胞のみならずグリア細胞にも作用しているデータを得ているため、アルツハイマー病に関連した機能メカニズム解析を実施する。
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Causes of Carryover |
2023年度は本解析に備えて、保有している試薬や培養細胞を用いて予備実験を実施した。2024年度以降の研究解析のための消耗品類の費用がかかる見込みであるため、次年度へ繰越とした。
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