2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel biomarkers for AKI-to-CKD transition by focusing on hypoxia-induced tubular regeneration.
Project/Area Number |
23K06874
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
黒崎 祥史 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20602030)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 基司 千葉大学, 大学院看護学研究院, 教授 (20409155)
石井 直仁 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80212819)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 低酸素 / AKI-to-CKD / 尿細管修復 / 細胞老化 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、PTECsにおけるHIF-1α活性化が尿細管修復機構に及ぼす影響を解析した。はじめに、不死化近位尿細管上皮細胞を用いて、HIF-1α活性化剤として知られるHIF /PH阻害剤(HIF /PHi)、Roxadustat (Rox), Daprodustat (Dap), Molidustat (Mol)が細胞増殖に及ぼす影響を解析したところ、Roxが濃度依存的に細胞増殖を誘導したことから以後の実験ではRoxを使用した。PTECsは本来増殖能の低い細胞であるが、PTECsのRox処理は未分化マーカーEts-1、Sox9を増加させた。これら変化はsiRNAによるHIF-1αのノックダウンによって抑制されたため、HIF-1α活性化はPTECsを脱分化することによって細胞増殖を亢進させることが明らかになった。この現象はAKI時の尿細管修復に関与することが予測される。 ついで、横紋筋融解症誘発性AKIモデルマウスを作製しRoxの影響を検証したところ、RoxはAKIに対して保護的に作用することが明らかになった。興味深いことにAKI時にみられるPTECsの細胞増殖に変化が見られないことが免疫蛍光染色によるPCNA発現解析により明らかになった。このことはRoxがAKI発症時に速かにPTECsの増殖を誘導することで尿細管修復を行う可能性を示している。今後、本モデルにおけるPTECsの脱分化状態について詳細に検討していく。一方で、横紋筋融解症誘発性AKIでは、発症後6週間において明確な間質線維化や炎症細胞浸潤が見られずCKDへの移行が考えずらかった。そこで葉酸誘発性AKIモデルを作製したところ、4週間後に炎症細胞の浸潤と間質線維化が観察された。そのため、以降の実験では葉酸誘発性AKIモデルを使用して、AKI-CKD移行の分子メカニズムと関連する予測マーカーの探索に使用する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞実験において、HIF活性化による尿細管増殖機構を新規に解明し、さらにAKI動物モデルにおいて尿細管障害がHIF-PHi投与によって軽減することを示すことができた。これは尿細管障害時にHIF-1活性化による尿細管修復機構が存在することを意味している。尿細管修復機構とAKI-CKD転換には深い関連があることが知られており、新規尿細管修復機構に関連する尿中分子がAKI-CKD移行の予測マーカーとなりうることが示唆された。加えて、AKIにおけるCKD移行の予防法を確立する基盤となりうるものと考えられ、HIF-1活性化の急性期における影響に関する実験は期待以上に順調に進行していると考えられる。一方で、AKI-CKD転換とHIF活性化をつなぐメカニズムとして細胞老化が考えられるが、HIF活性化が細胞老化に及ぼす影響を十分に解析できていない。そのため、HIF活性化が慢性期に及ぼす影響の解析において若干実験が遅れているものと考える。また、当初計画していた横紋筋融解症誘発性AKIモデルは明確なCKD移行を示さなかったため、新たに葉酸誘導AKIモデルを作製した。葉酸誘導AKIモデルはCKD移行の予兆である炎症や間質線維化などを示したため、使用するモデルを変更することにより解析に遅れが生じた。この点において、動物実験も若干実験が遅れているものと考えるが、速やかに別の実験モデルを確立できたことについては順調にプロジェクトが進行しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞実験において、HIF-PHi阻害剤は細胞増殖を起こすことで尿細管修復に関与することが明らかになったが、HIF活性化の慢性的な影響については解析できていない。過剰なHIF-1α活性化は腎線維化を誘導することが知られており、高用量HIF-PHi阻害剤による過剰なHIF活性化によりCKDの原因の一つと考えられる細胞老化が進行するかを観察していく。これにより過剰なHIF-PHiの投与が細胞老化を介してCKD移行を誘導することを示すことになり、HIF活性化の急性期の腎保護効果に反して慢性期にはCKD移行を起こすという二面性を示すことができる。具体的には、今年度確立した培養方法をもとに、HIF-PHiを過剰に投与することで細胞老化マーカー(p21、p16発現、SA -be-ta Gal染色、細胞周期解析、老化関連サイトカイン)の解析を行う予定である。動物実験では、今年度実施した横紋筋融解症誘発AKIモデルへのRox投与実験において、脱分化マーカーの解析を実施することで、PTECs の脱分化と増殖が尿細管修復に関連することを示す。また、今年度確立した葉酸によるAKI-CKD転換モデルを使用し、HIF-PHi投与の容量と投与期間を調整し、HIF-1の過剰な活性化がAKI-CKD転換を加速させるかを観察していく予定である。
|
Causes of Carryover |
キャンペーンやセットで販売されている抗体を購入することで、当初予定していたよりも若干抗体購入費用を低く抑えることができた。また細胞培養実験において、培養条件やHIF-1活性化条件の設定がスムーズに進行したため、培養器具等の使用も想定より少なかった。 一方で、動物実験について解析が遅れている部分があるため、生じた次年度使用額を用いて、脱分化マーカー発現解析用の抗体の購入に充当したいと考えている。
|
-
-
[Presentation] Oxidative stress-related mitochondrial and lysosomal quality control mechanisms in renal cortex during the normoalbuminuric stage of diabetes mellitus.2023
Author(s)
Ishii N, Carmines PK, Sato N, Kurosaki Y, Imoto A, Sugase T, Narita M, Yokoba M, Ichikawa T, Takenaka T, Katagiri M.
Organizer
Kidney Week 2023
Int'l Joint Research
-
-
-
-
[Presentation] 近位尿細管において脂肪酸結合アルブミン負荷は細胞老化を促進する2023
Author(s)
黒崎祥史, 成田実央, Rikke Nielsen, Kathrin Weyer, 井本明美, 佐藤直和, Geraldine Mollet, 鈴木英明, 横場正典, 竹中恒夫, 市川尊文, 石井直仁
Organizer
第63回日本臨床化学会年次学術集会
-
-
[Presentation] 腎症発症前糖尿病ラットのミトコンドリア品質管理メカニズムと脂肪酸・カルニチンの動態について2023
Author(s)
石井直仁, 黒崎祥史, 井本明美, 佐藤直和, 成田実央, 土筆智晶, 鈴木英明, 菅生太郎, 横場正典, 市川尊文, 竹中恒夫, 片桐真人
Organizer
第63回日本臨床化学会年次学術集会
-
-
[Presentation] SARS-CoV-2感染はK18-hACE2 Tgマウスの腹側被蓋野におけるTPH2陽性神経細胞死を誘導する2023
Author(s)
久保誠, 今井基貴, 川上文貴, 植松崇之, 松本俊英, 川島麗, 黒崎祥史, 前花祥太郎, 長塩亮, 花木秀明, 北里英郎
Organizer
第70回日本ウイルス学会学術集会
-