2023 Fiscal Year Research-status Report
PET/MRI neuroimaging for glutamate receptors in Alzheimer's disease
Project/Area Number |
23K06924
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
井川 正道 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60444212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
小坂 浩隆 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (70401966)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / グルタミン酸受容体 / タウ / 分子病態 / PETイメージング / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病は認知症でもっとも多い原因疾患であり,脳内のアミロイドβとタウの蓄積が神経変性および認知機能低下をもたらすことが知られている.蛋白蓄積から神経変性に至る機序として,AMPA型やNMDA型のグルタミン酸受容体障害によるシナプス障害や,フリーラジカル増加による酸化ストレス増強,脳内からのアミロイドβの排泄機構であるグリンパティック系の機能不全など,各種の分子病態の関与が想定されている.本研究では,アルツハイマー病で想定されるこれらの分子病態をポジトロンCT(PET)および機能的MRIによる分子イメージングによって可視化し,アルツハイマー病態の進展に与える影響を明らかにすることを目的とする. 初年度である本年度は,当初の研究計画に沿って,AMPA型グルタミン酸受容体に対するPETリガンドである11C-K-2において動物を使用した前臨床試験によって毒性がないことを確認し,倫理審査委員会の承認を得て,ヒトでのPET検査の実施を準備した.並行して,アルツハイマー病患者に対して11C-PiB PETと64Cu-ATSM PETを実施し,脳内のアミロイドβ蓄積と脳後部帯状回や海馬における酸化ストレスとの間に正の相関を明らかにし,アルツハイマー病態の進展に対する酸化ストレスの関与を実証した(論文準備中).さらに,アルツハイマー病患者において11C-PiB PETと機能的MRIによる検討を行い,脳内のアミロイドβ蓄積とグリンパティック系機能との間に負の相関を見出し,アルツハイマー病におけるグリンパティック系の機能不全がアミロイドβ蓄積の進行に与える影響を明らかにした(論文投稿中). 引き続き本研究を推進することによって,グルタミン酸受容体を中心とした分子病態の包括的な可視化という新たな評価法を確立し,アルツハイマー病の進展における病態機序の解明を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は,研究計画に沿って,アルツハイマー病患者群および認知機能正常者群に対し,アミロイドβに対する11C-PiB PET,タウに対する18F-MK-6240 PET,酸化ストレスに対する64Cu-ATSM PET,および機能的MRIによるグリンパティック系評価を中心とした検査を実施した.また,動物を使用した前臨床試験によって,AMPA型グルタミン酸受容体に対するPETリガンドである11C-K-2に毒性がないことを確認し,倫理審査委員会の承認を得て,患者での11C-K-2 PET検査を実施する準備が完了した.引き続き,患者群および健常者群に対して11C-PiBおよび18F-MK6240によるPET検査を行うとともに,次年度早々に11C-K-2 PET検査を実施する予定である. また,アルツハイマー病患者において11C-PiB PETによる脳内のアミロイドβと64Cu-ATSM PETによる脳内の酸化ストレスを評価したところ,アミロイドβ蓄積と後部帯状回や海馬における酸化ストレスとの間に正の相関が認められた.さらに,アルツハイマー病患者において11C-PiB PETと機能的MRIによるグリンパティック系機能を検討したところ,アミロイドβ蓄積とグリンパティック系機能との間に負の相関が認められた.これらの結果は,酸化ストレス増強やグリンパティック系機能不全がアルツハイマー病態の進展に関わることを強く示唆するものであった. 今後はグルタミン酸受容体とアミロイドβやタウ蓄積との関連を明らかにし,アルツハイマー病態機序の解明を目指す.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,脳内のAMPA型グルタミン酸受容体に対するPET評価法を確立し,アミロイドβやタウ,神経変性からなるアルツハイマー病理および各種の分子病態をPET/MRIによる分子イメージングによって包括的に可視化することで,アルツハイマー病態の進展機序を解明することを目的とする.そのために,以下の計画に従って研究を実施する. (1) 被験者の選定・評価:臨床的診断基準に合致するアルツハイマー病患者と認知機能正常者に対し,十分な説明と同意の上,診察・心理検査による臨床症状の評価を行う.(2) PET/MRI画像検査:被験者に対し,本学設置のPET/MRI統合型スキャナによって,11C-K-2(AMPA受容体)・11C-PiB(Aβ)・18F-MK-6240(タウ)・機能的MRI(神経変性)のPET/MRI撮影を行う.(3) 臨床症状と画像検査の再評価:一定期間(12-18か月)経過後に,各患者に対して上記の各種PET/MRI検査と心理検査を再度施行し,経時的変化の検討のためのデータを得る.(4) 統計学的解析:得られた画像データに対しソフトウェアによって統計学的解析を行い,群間での比較,各PET集積・MRIデータ・臨床症状との比較,経時的変化を検討する. 以上の計画によって,アルツハイマー病患者における脳内AMPA受容体密度の変化,およびアルツハイマー病理や認知機能障害との経時的な相関を明らかにする.また,健常者における,正常加齢が脳内AMPA受容体密度に与える影響を併せて検討する.本計画の推進によって,アルツハイマー病におけるグルタミン酸受容体障害とアミロイド・タウ・神経変性および症状との比較を行うことで,アルツハイマー病態の進展機序の解明を目指す.
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Causes of Carryover |
本年度は独立基盤形成支援による支援を受けることができ,本支援による交付によって研究に必要な画像解析用ワークステーションなどを購入することができたこと,検査に必要な物品に係る消耗品費(PET薬剤など)や,学会などへの参加に必要な旅費への使用が当初の予定よりも少なくなったことにより,次年度使用額が生じた. 研究自体は概ね順調に進行しており,次年度には11C-K-2(AMPA型グルタミン酸受容体)PET検査も開始されるため,係る消耗品費や,学会での情報収集・発表に係る旅費も増加することが見込まれており,今回の次年度使用額はそれらに充てる予定である.
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