2023 Fiscal Year Research-status Report
molecular approach for autoimmunity triggered by herpes simplex encephalitis
Project/Area Number |
23K06974
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
原 誠 日本大学, 医学部, 准教授 (10817224)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 秀人 日本大学, 医学部, 教授 (20330095)
大日方 大亮 日本大学, 医学部, 准教授 (20624886)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 免疫沈降法 / 神経表面抗体 / 自己免疫 / 単純ヘルペス脳炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は当科で施行中の多施設共同研究において単純ヘルペス脳炎に続発する自己免疫性脳炎を新たに14例集積した。うち神経表面抗体(neuronal surface antibody: NSA)陽性例が6例みられ、NMDA受容体抗体陽性の1例を除く5例が既知のNSA群の検索で陰性を示し、特異標的抗原の同定を要した。ラット凍結脳を用いた海馬の免疫染色の結果は、3例において海馬と小脳皮質に染色性を認めた一方で、2例は海馬のみが選択的に染色されており、異なる神経表面抗原を標的とする新規のNSAの存在が示唆された。先行研究で既に集積している未知のNSAが陽性の血清5検体と併せた10例の対象血清検体について、免疫沈降法による抗原の回収を試みた。免疫沈降法は成熟したラット海馬の初代培養細胞に対して、NMDA受容体抗体陽性血清(コントロール血清)あるいは対象血清を2時間反応させた後に細胞をIPバッファーで溶解し、抗原抗体複合体を磁器ビーズを用いて回収した。10例の対象血清の中から、十分な抗体力価を有し、より多量の抗原が回収できると期待された3検体について優先的に免疫沈降を施行した。免疫沈降により回収した抗原蛋白をポリアクリルアミドゲルに電気泳動した結果、対象2検体においてコントロール血清により回収した抗原と異なるゲルのバンドが検出されたため、ゲルのバンドを抽出して質量分析による蛋白の同定を施行している段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は未知の神経表面抗体(neuronal surface antibody: NSA)を含む対象血清に対して免疫沈降法による特異抗原の回収と質量分析による蛋白の同定までを完了させる予定であったが、進行に若干の遅れが生じている。確かにNSA陽性脳炎患者の血清中のNSA力価は脳脊髄液中の力価に対して低い力価を示す、すなわち免疫沈降に適した高い抗体力価を有していない場合もありうる。本研究でも未知のNSAを含む対象10血清検体のうち2検体は低力価、5検体は中等度力価、3検体は高力価であった。当初はラット凍結脳に対する免疫染色の染色性の異なる血清を優先して選択し、中等度力価の対象血清も含めて免疫沈降による抗原回収を試みたが、効率的な抗原蛋白の回収に至らなかった。この結果を踏まえ、NSA力価を優先して免疫沈降を施行する方針へ変更したことにより、追加の期間を要したものの、2検体で未知の標的抗原を回収できており、現在質量分析による蛋白同定に取り掛かっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
NSA抗体力価を優先して免疫沈降を進める方針へ変更したことにより、現在は質量分析により対象2検体より回収した抗原蛋白の同定に取り掛かっている最中である。今後は質量分析の解析結果を踏まえて候補タンパクに対するin silicoの解析を行い、特異抗原の同定、さらに2024年度に予定している新規抗体の細胞応答への作用に対する検討を進める予定である。細胞応答への作用に対する検討に対しては、抗体を反応させた細胞からRNAを抽出しRNAシークエンスの解析を行う工程が律速になり得るが、既に研究分担者と工程の準備を整えており研究を加速させることが可能と考えている。
|
Causes of Carryover |
2023年度に使用した費用には、現在施行している質量分析の委託検査の費用、解析のための費用が計上されていないことが予定より低い使用額となった大きな要因と考える。2024年度においてはこれらの費用に加え、対象検体が新たに集積され、さらなる質量分析に要する費用の計上も想定している。さらに研究に要する試薬等の価格改定に伴う支出増も考慮すれば、2024年度は2023年度の繰越額を含めた支出になると考えている。
|