2023 Fiscal Year Research-status Report
新規動物モデルを活用した筋萎縮性側索硬化症の分子病態解明と治療法開発
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23K06977
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
高橋 祐二 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院 脳神経内科診療部, 部長 (00372392)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 運動ニューロン / コンディショナルノックアウトマウス / ErbB4 / TDP-43 / 核小体 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因遺伝子ERBB4の運動ニューロン(MN)特異的なノックアウトマウスを活用し、ErbB4の発現喪失がMN変性を惹起する分子メカニズムを解明する。 【方法】タモキシフェン依存性MN特異的コンディショナルノックアウトマウス(cKOマウス)の8週齢マウスにタモキシフェンを投与し、4週・8週・12週後の脊髄MNの変性過程を分析する。NRG-ErbB4シグナリング下流の分子の挙動を分析し、パスウェイの異常を同定する。筋病理を解析し神経原性変化の所見を確認してMN変性を立証する。 【結果】タモキシフェン投与後4週・8週・12週の脊髄前角においてMNの脱落を認めた。また筋病理所見で神経原性萎縮の所見を認め、MN脱落の所見が裏付けられた。さらに、変性MNにおいて核内TDP-43の染色性低下を認めた。細胞質における凝集は認められなかった。興味深いことに、Erbb4陰性の変性過程にあるMNにおいて核小体の消失傾向を認め、核小体マーカーの免疫組織化学的分析により確認を行った。 【考察】本研究により、ErbB4喪失がMN変性を直接惹起しうることが立証された。さらに、TDP-43の核内染色性低下を認めた一方で細胞質凝集を認めなかったことから、ErbB4喪失によるMN変性はTDP-43細胞質凝集体非依存性のメカニズムが働いていると考えられた。さらに、核小体の消失現象を認めたことから、ErbB4が核内TDP-43減少から核小体機能障害を介してMN変性に至るメカニズムが想定された。今後はErbB4が核内TDP-43減少・核小体消失に至るメカニズムを解明するとともに、これらの現象とMN変性との関連を分析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究により、核内TDP-43減少・核小体消失という当初想定していなかった所見が認められ、研究が新たな展開を示したことから、当初の計画以上に研究が進展したと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
ErbB4喪失による核内TDP-43減少・核小体消失の分子メカニズムを解明するとともに、これらの現象とMN変性との関連を分析する。核小体ストレスの分子マーカーの挙動を分析する。ヒト剖検脳を用いた検証も進める。核小体ストレスの防御因子を探索し、MN変性に対する保護効果を検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画ではErbB4のシグナリング関連分子に対して網羅的に免疫組織化学的手法を用いて検索し、ErbB4喪失によるMN変性の分子メカニズムを改名する予定であった。実際に変性MNを観察してみると、核内TDP-43減少と核小体消失という非常に特異的な現象を観察することができて、網羅的な分析を行う必要性がなくなったために、次年度使用額が発生した。次年度は核内TDP-43減少・核小体消失に焦点を絞り、核小体ストレスを軸に病態の解明を進めて行く予定であり、次年度使用額を活用する計画としている。
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