2023 Fiscal Year Research-status Report
Preparation of artificial exosomes containing vascular endothelial cell-derived factors for the treatment of demyelinating diseases
Project/Area Number |
23K06994
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Research Institution | Gunma University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
倉知 正 群馬医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (20271546)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 細胞外小胞 / エクソソーム / オリゴデンドロサイト前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞由来の細胞外小胞(エクソソーム)に含まれるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の生存・増殖を促進するmicroRNAを同定、この分子を包含する人工的に作製したエクソソームを利用した白質病巣の修復法を開発し、認知症発症予防法を確立することを目的として令和5年度は下記の実績が得られた。 OPCの生存・増殖を促進するエクソソームに含まれるmicroRNAを同定するにあたり、ラット脳微小血管内皮細胞およびラット線維芽細胞を培養してその培養上清から抽出したエクソソームを利用した。ラット脳微小血管内皮細胞由来エクソソームにはOPCの生存・増殖を促進する活性があるが、ラット線維芽細胞由来エクソソームには同様な活性がないことから、両者に含まれるmicroRNAを比較することで目的microRNAに関する知見を得ることができる。これらの細胞由来エクソソームからmicroRNAのライブラリーを調製し、次世代シーケンサーによりmicroRNAの解析を開始した。 血管内皮細胞由来エクソソーム処理の有無によるOPCの遺伝子発現変化を比較して、エクソソーム処理で有意な発現変化が認められるOPC生存・増殖の促進に関与するmRNAについて検討するため、エクソソームで処理したOPCとエクソソーム未処理のOPCからtotal RNAを回収した。これらのRNAサンプルについて次世代シークエンサーによりRNA-Seq解析を開始した。 ヒトiPS細胞から誘導した脳微小血管内皮細胞を白質虚血ラットモデルの梗塞域へ移植することで脱髄軸索の再髄鞘化が促進されることが知られている。ヒトiPS細胞由来脳微小血管内皮細胞から分泌されるエクソソームに含まれるmicroRNAについて解析を行うにあたり、iPS細胞の培養法および脳微小血管内皮細胞への分化法について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、ラット脳微小血管内皮細胞およびラット線維芽細胞由来エクソソームについて培養上清に含まれるエクソソームを回収し、それらに含まれるmicroRNAの網羅的解析を進めた。さらに、ラット脳微小血管内皮細胞由来エクソソームを添加したOPCおける発現遺伝子のRNA-Seq解析を開始した。これらの解析結果に基づいてデータベースを活用してOPCの生存・増殖に関わる候補microRNAの探索を進める予定である。一方、ヒトiPS細胞由来脳微小血管内皮細胞については、初年度での培養系の立ち上げには至らず、次年度に開始することとなった。以上より、研究はやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞由来脳微小血管内皮細胞由来のエクソソームを調製し、これに含まれるmicroRNAについて解析する。この結果と、初年度に解析を開始したラット脳微小血管内皮細胞およびラット線維芽細胞由来エクソソームに含まれるmicroRNAについての解析結果、血管内皮細胞由来エクソソーム処理の有無によるOPCの遺伝子発現解析の結果から、血管内皮細胞由来エクソソームに含まれるOPCの生存・増殖の促進に強く関与するmicroRNAも同定を進める。関与が示唆されたmicroRNAに対応する合成microRNA mimic、microRNA inhibitorを培養OPCに導入してOPCの生存・増殖に対する効果を検討する。また、これらのmicroRNAを高濃度で内包するエクソソームを産生する系の構築を図る。 大脳白質へのエンドセリン局所注入による白質虚血ラットモデルの作製を開始する。注入後に数日間隔で脳切片を作製、Luxol Fast Blue染色・免疫染色により脱髄の進行度を調べ、エクソソーム投与による白質病変の再髄鞘化を誘導するために適切なステージや投与方法などについて検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)初年度の研究では、ラット脳微小血管内皮細胞の培養に主として以前から在庫していた細胞培養用の試薬や消耗品を利用した。また、ラット脳微小血管内皮細胞およびラット線維芽細胞由来エクソソームのRNAサンプル、OPCのRNAサンプルとして以前に調製して凍結保管していたサンプルも利用して研究を進めた。これらの理由により、年度内に予定していた細胞培養の回数が少なかった。また、当初計画していたヒトiPS細胞由来脳微小血管内皮細胞の培養については手法の検討を終えたが、実際に培養を開始できていない。以上の理由により、実験動物(ラット)や細胞培養用試薬などに関わる経費が当初の見積額より抑えられ、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度から開始するiPS細胞由来脳微小血管内皮細胞の培養器具・試薬の経費として使用する。また初年度に引き続き、エクソソーム由来microRNAの解析およびOPCにおける発現遺伝子解析も進める予定であり、実験動物(ラット)や細胞培養用試薬などの経費としても利用する。
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