2023 Fiscal Year Research-status Report
従来法とオルガノイド培養法の重粒子線による生物効果解析
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23K07100
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Research Institution | Kanagawa Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
関原 和正 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所がん生物学部, 任期付研究員 (20761662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 亮一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, QST病院 重粒子線治療研究部, 研究統括 (90435701)
氷室 秀知 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がんワクチン・免疫センター, 医師 (90772567)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 重粒子線 / 三次元培養 / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん治療においては、既存の治療法に抵抗性を示す難治がんの撲滅とともにできるだけ副作用を軽減できるがん治療法の確立が喫緊の課題となっている。重粒子線治療は、日本が世界を先導する最も優れた低侵襲がん治療法の一つであり、治療効果が高く正常細胞へのダメージを最小限に抑えることができることから高い注目を集めている。未だ治療法が確立していない難治がん患者にとっては希望の光であり、さらなる普及、適応拡大が望まれる。そのためには、重粒子線の生物作用メカニズムを正確に理解し、それに基づいた最適な治療法の開発が必要不可欠である。そのための基礎研究を進める上で、放射線や薬剤の有効性を評価するために従来より二次元(2D)細胞培養が用いられてきた。ただ2D単層培養系は、腫瘍適切な構造および細胞間接触が失われるため、生体内の腫瘍の状況を忠実に反映することができない。そこで本研究は2D単層培養よりも腫瘍環境を模倣できる3D培養法を用いて重粒子線の抗腫瘍効果を評価する。 令和5年度は、難治がんの一つである甲状腺未分化がんを対象に重粒子線照射の生物効果を評価した。まずは甲状腺未分化がん細胞株6種に対し、重粒子線の生物学的効果比(RBE)を求めたところ約3程度であった。これはX線の1/3の線量でX線と同等の効果を得ることが出来ることを意味する。実際に臨床で既に治療が行われている子宮頸部腺がんの細胞株HeLaのRBEが約1.9であることから、甲状腺未分化がんに対して重粒子線治療がかなり有効であるのではないかということが示唆された。また、細胞周期停止、細胞死誘導、細胞遊走や浸潤の抑制などにおいても、X線と比較して重粒子線の効果が大きいことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は難治がんの1つである甲状腺未分化がんを対象に、重粒子線照射の効果を従来法で確認した。少しずつではあるが、患者由来オルガノイドに関してもサンプルを蓄積している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、in vivo担癌マウスモデル、三次元スフェロイドや患者由来オルガノイドを用いた時にも同様の効果がみられるかどうかを検証する。また腫瘍単独ではなく、周囲の微小環境との相互作用についても解析する。
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Causes of Carryover |
現在執筆中の論文の英文校正費および投稿料を支出する予定だったが、マシンタイム等の状況などで遅れており、支出できなかった。また国際学会の旅費に充てようと考えていた費用が、学会からの旅費補助をいただけることになり浮いたことで、次年度使用額が生じた。 予定していた論文投稿費と消耗品購入に有効利用しようと検討している。
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