2023 Fiscal Year Research-status Report
高気圧酸素療法による放射線神経傷害抑制の分子機序の解明
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23K07101
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片桐 千秋 北海道大学, 薬学研究院, 特任助教 (00443664)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高気圧酸素療法 / 放射線 / スパイン |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療は悪性度の高い脳腫瘍の摘出手術後に行われる標準治療であるが、加療期間中に認知機能の低下が副作用として伴うことがある。高気圧酸素療法を併用した脳腫瘍への放射線治療は臨床第2相試験により患者の予後を延長し、拡散テンソル画像解析から高気圧酸素を併用した治療患者群で白質神経細胞のFA値が上昇し、白質の統合性が改善されるなどの治療効果が得られている。動物モデルを用いた実験では10Gyの放射線照射により大脳白質の軸索縮小、成熟スパインの消失、海馬における神経新生の抑制、成熟スパインの消失を示した。申請者は放射線照射による大脳白質の軸索縮小および成熟スパイン形成の消失に着目し本年度は以下の実験を行なった。成熟スパイン消失のメカニズムを解明するため、RNA-seqおよび組織学的解析用に2Gy/dayで5日間、合計10Gy全脳に照射した健常マウス動物モデルを作成し、冷PBS環流後全脳を摘出しQIAGEN社の長期保存液で保存した。その一方で、組織学的にスパイン形成に関与するタンパク質群の動態を観察するために未処理マウスの全脳を用いて条件検討を行なった。全脳の透明化は改変CLARITY法を用いて透明化した。その後、スパイン形成に関与するタンパク質、アクチン重合促進タンパク質(ドレブリン)、裏打ちタンパク質(PST95)、アクチン繊維の抗体を用いて染色を試みたが、全脳では抗体液が浸透せず、ある程度の暑さに切断する必要性が求められた。ライトシート顕微鏡でスパインの形態を捕捉でき、脳切片の内部まで抗体が浸透する厚さおよび抗体の濃度の条件検討を行なった。スパインの3Dイメージング化を目標としているが現在のところかなり薄い切片でのみ観察できており、今後は観察できる範囲を広範囲にする条件検討を行い、大脳白質の各レイヤーにおける成熟スパインのへの高気圧酸素療法による保護作用の解析を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq解析をするための充分量のサンプルを作成終わって次年度は解析に集中できるため。組織学的解析についても条件検討を重ねスパインの動態観察を進められる段階に来ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
PAXgene組織固定液で保存した脳組織の白質部位からシングル核を抽出しシングルRNA解析を進める。遺伝子発現のパラメータからニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトに分画し、ニューロンのデータセットを得る。放射線照射単独群、高気圧酸素併用群、未処理群における遺伝子発現を比較する。得られたデータにおけるスパイン関連遺伝子の抗体を用いて免疫組織学的にスパインにおける分布を観察する。
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Causes of Carryover |
本年度はサンプル調整に注力し最も費用のかかるシングルセルRNAseq解析を次年度に行うことにしたため、解析に必要な使用額分を次年度に繰り越した。
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