2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K07303
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
巽 康年 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ 小児難治がん研究室, 上席研究員 (00450578)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / ミトコンドリアDNA / 次世代シークエンサー / マイクロアレイ遺伝子発現解析 / BMCC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経芽腫の自然退縮(悪性化防止)機構、すなわち神経芽腫の弱点と考える病態の理解を進め、そこから神経芽腫克服に向けた新規治療戦略開発の糸口を探索することを目的としている。 令和5年度は、以下の項目について研究を推進した。1)細胞増殖のブレーキとしてのBMCC1の機能と、その破綻が細胞に及ぼす影響:神経芽腫の予後良好性と関連する因子として同定され、ミトコンドリアを介した細胞死を誘導することがわかっているBMCC1(BNIP2 and Cdc42GAP homology motif-containing molecule at the carboxyl terminal region 1)の機能解析を進めた。BMCC1ノックアウトマウスと野生型マウスの副腎について網羅的な遺伝子発現解析を行い、BMCC1の発現低下によって影響を受ける遺伝子群を同定した。さらに、がん抑制またはがんの悪性化に関連すると思われる経路の脱制御を見出した。2)BMCC1欠損時におけるp53経路の活性化とその意義:BMCC1とp53経路の関連性を調べるため、オルガノイド培養細胞発がんモデル実験系を導入した。それに先立ち、マウス由来オルガノイド細胞株の樹立とその培養技術を習得した。3)mtDNA変異の特徴と神経芽腫の病態(自然退縮や悪性化)との関連:次世代シークエンサーを用いたミトコンドリアDNAの網羅的解析を神経芽腫240症例に対して実施し、ミトコンドリア遺伝子内の一塩基多型候補を同定した。これらの一塩基多型候補について、サンガーシークエンス法を用いて検証を行い、一塩基多型を抽出した。 なお、本研究成果の一部について、筆頭演者として2件の国内学会発表を、共同演者として6件の国内学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経芽腫の悪性化と自然退縮(悪性化防止)メカニズムの理解を目指し、「自然退縮の鍵となる分子のBMCC1の機能解明研究」と「自然退縮への機能的関与が示唆される細胞内小器官のミトコンドリアに着目した研究」の両面から研究を推進した。これまでに、ノックアウトマウスを用いた研究から個体レベルでBMCC1の機能解明が進展するとともに、次年度以降の研究に使用予定であるオルガノイド培養系の導入を進めることができた。一方で、神経芽腫症例のミトコンドリアDNA網羅的解析は、目標解析症例数に迫る240症例の一次解析を終了した。以上の研究を通じて、神経芽腫の悪性化と自然退縮メカニズムの理解につながる成果を得つつある。よって、本研究課題は当初の計画通りにおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「BMCC1ノックアウトマウスの解析研究」と「神経芽腫症例のミトコンドリアDNA変異の解析研究」から取得した網羅的解析データーの分析を進める。また、オルガノイドを含む培養細胞株を用いて悪性化防止機構におけるBMCC1と関連分子の機能連携について検証を行う。さらに、病因性を持つことがデーターベース解析から示唆されるミトコンドリア遺伝子の一塩基多型については、神経芽腫細胞の悪性化にどのように寄与するか検証を進めるとともに、これらがBMCC1の介在するミトコンドリア経路の細胞死に与える影響についても解明していく。
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Causes of Carryover |
初年度は、先行研究から得られたデーターの解析に注力したため、物品費の使用額が予定よりも少なかった。次年度以降は、細胞を用いた解析が本格化するため、翌年度分として請求した助成金とあわせて、試薬など物品の購入ならびに研究を推進するための人件費への使用を計画する。
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