2023 Fiscal Year Research-status Report
直腸環境の特殊性に着眼した潰瘍性大腸炎再燃機序の解明
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23K07355
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荻野 治栄 九州大学, 医学研究院, 講師 (80621705)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 再燃機序 / 粘膜バリア機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎(UC)は再燃・寛解を繰り返す難治性疾患であり、本邦の患者数は30年前と比べると10倍に増加している。若年者に発症することが特徴であり、常に再燃のリスクがあるため寛解が得られても一生治療が必要になる。 UCは粘膜を首座とする炎症が、直腸から連続して全大腸に波及していくことが特徴であるが、なぜ直腸から炎症が波及していくのかいまだ不明である。発病時だけでなく再燃時にも直腸から炎症が広がっていくことから、UCの病態に直腸環境の特殊性が関与している可能性が高いと考えている。最近申請者は、寛解期UCの直腸で粘膜バリア機能が低下しており、この粘膜バリア機能の低下が再燃につながっていること、さらにClaudin2(CLDN2)が炎症改善後も持続発現しており、バリア機能低下に関連している可能性があることを見出した。 本研究の目的は、直腸の特殊環境に着目してUCの再燃機序を解明し、一生治らないとされているUCの治癒につなげたいと考えている。 UCの病態から粘膜バリア機能を含めた直腸環境が重要な役割を果たしている可能性が高いと推察されるが、直腸環境を検討した報告はほとんどない。発症前の直腸環境を評価することが出来れば一番良いが、現実的には困難である。そこで、申請者は寛解期UCにおける直腸環境に着目した。寛解期では、粘膜に炎症が無い粘膜治癒状態でも再燃を来すことがあり、その場合も直腸から炎症が波及していく。そこで、直腸環境に関わる何らかの因子が再燃を規定していると考えらえるため、その因子を同定することが目的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はまずUCにおける直腸環境の特殊性に着目して解析を行った。RNA-seqによる解析、prospective studyによる解析を行った。RNA-seqでは、活動期UC, 寛解期UC, 健常人のS状結腸と直腸の比較を行い、profileが寛解期UCの直腸で異なっていること、さらにvolcano plotにて粘膜バリア機能に関わる遺伝子が有意に亢進していることが分かった。 prospective studyにてRNA-seqで得られた結果の検証、及びin vivoの粘膜バリア機能の解析を行い、寛解期UC直腸にて粘膜バリア機能が有意に低下していることを見出している。その後前向きに再燃の有無を検証した結果、経過観察期間2年間で32例中7例の再燃を認めた。 現在、非再燃群と再燃群においてどのような因子が再燃に影響を及ぼしているか解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトサンプルにおける解析を行った後に、マウスの基礎実験にて検証を行っていく予定。
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Causes of Carryover |
今年度は既存タに対する解析と前向き検証がメインであった。次年度の基礎研究のための費用を次年度で使用するため。
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