2023 Fiscal Year Research-status Report
光免疫療法を組み込んだin situワクチンによる消化器がんの術前免疫療法の開発
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23K07386
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 健 京都大学, 医学研究科, 准教授 (60594372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 健 東京大学, 医科学研究所, 教授 (00448086)
宇座 徳光 京都大学, 医学研究科, 講師 (30447958)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | がん免疫 / 自然免疫 / ワクチン / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
切除可能な消化器がんでは外科的手術が標準治療だが、術後の局所再発や遠隔転移再発の制御が問題であり、有効な治療法の確立が望まれる。腫瘍の切除前に免疫を賦活化する術前免疫療法は、切除前の腫瘍がワクチン抗原となり得るため、効率的にがん免疫が誘導されると期待されるが、その有用性や至適な治療法は明らかでない。申請者は、ナノ粒子化TLR9リガンド K3-SPGを腫瘍局所に注入するIn Situ Vaccine(K3-SPG-ISV)の動物モデルでの抗腫瘍効果を明らかにし、さらにK3-SPG-ISVが、腫瘍細胞を選択的に破壊する光免疫療法との併用で相乗効果を示すことを見出した。ISVの特徴は患者自身の腫瘍をワクチン抗原のソースとして利用することであり、ISVは術前免疫療法免疫療法と親和性が高い。本研究は、これらの先行研究を発展させ、光免疫/K3-SPG-ISV併用療法を術前免疫療法として試み、その有用性や作用機序を明らかにすることを目的とする。初年度は膵癌細胞株皮下移植マウスモデルを用いて、術前光免疫/K3-SPG-ISVの実施から腫瘍切除までの期間についての検討を行い、術後の局所再発抑制効果がみられる条件を設定した。また、この膵癌マウスモデルで術前光免疫K3-SPG-ISVを施してから同じ膵癌細胞株を再移植すると、比較コントロール群の場合とは異なり、完全に腫瘍の生着がみられないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、予備実験として膵癌細胞株の皮下移植マウスモデルを用いて、術前光免疫/K3-SPG-ISVの実施から切除までの期間について検討を行い、 無治療群、光免疫群、K3-SPG-ISV群との比較で、術後の局所再発抑制がみられる条件を定めた。局所再発の有無は腫瘍切除の際のマージンの取り方によって規定されることが判明したが、処置後10日以内の切除では再発がみられなかった。術前免疫療法による免疫記憶の誘導を確認するため、術前光免疫/K3-SPG-ISVを施したマウスに同じ膵癌細胞株の再移植を行ったところ、対象群とは異なり、全ての個体で腫瘍の生着はみられなかった。本研究で最も重要となる評価項目は術前免疫療法による再発抑制効果の証明であり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の課題としては、 術前光免疫/K3-SPG-ISVによる生存延長効果を対象群との比較で評価する。また、術前光免疫/K3-SPG-ISVを抗PD-1抗体と併用し、無治療群、術前光免疫/K3-SPG-ISV群、抗PD-1抗体群との比較で、チェックポイント阻害剤の併用による相乗効果を評価する。腫瘍微小環境の変化の解析も次年度の課題とし、術前光免疫/K3-SPG-ISV群の摘出腫瘍や摘出後の対側皮下腫瘍を用いてRNA-seqと免疫組織染色を行い、対象群との比較で評価する。また、皮下移植で肺転移を自然に生じるルシフェラーゼ組み込み乳癌細胞株を用意できたため、この細胞株を用いたモデルマウスで術前免疫療法による遠隔転移の抑制効果を解析する。
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Causes of Carryover |
実験遂行に必要な物品の調達方法の工夫により当初予定していた必要経費よりも節約が可能であったため、その節約ぶんを次年度以降に繰り越した。
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