2023 Fiscal Year Research-status Report
腸管粘膜バリア機能の修復・再生機構における腸肝連携の解明
Project/Area Number |
23K07404
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
大坂 利文 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70514470)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | LECT2 / 腸管炎症 / 腸上皮組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、腸管粘膜バリア機能の破綻は腸管に慢性的な炎症応答を誘引し、炎症性腸疾患や生活習慣病など様々な疾患の病態形成と関連していることが示唆されている。つまり、腸管粘膜バリア機能の修復・再生を促進する治療方法の確立は、様々な疾患の病態制御と関連する重要な課題である。本研究の目的は、腸管と肝臓の臓器連関の視点から腸管粘膜バリア機能の形成や腸管炎症制御に関わる分子メカニズムを解明することである。 本研究では、肝臓で特異的に産生されるヘパトカインであるLECT2(leucocyte cell-derived chemotaxin 2)を欠損したマウスでは、デキストラン硫酸塩(Dextran sodium sulfate, DSS)誘導性腸炎からの回復が著しく弱いことを見出した。とくに、DSS投与中止後のLECT2欠損マウスは、野生型マウスに比べて、体重の回復が大幅に遅延していた。結腸のHE染色像を観察すると、野生型マウスではDSS投与休止から6日後に大腸の陰窩構造の回復が見られるのに対して、LECT2欠損マウスでは腸上皮組織の修復応答が著しく低下していた。また、両群の腸炎発症期の結腸細菌叢を調べたところ、両群ともに腸炎誘導に伴い、Bacteroidaceae科、Enterobacteriaceae科が増加し、Muribaculaceae科が減少することがわかった。ただし、LECT2欠損マウスでは、野生型マウスに比べてLachnospiraceae科、 Turicibacteraceae科、 Lactobacillaceae科が少なく、Muribaculaceae科およびBacteroidaceae科が多く存在していることがわかった。つぎに、マウスLECT2リコンビナントタンパク質(mrLECT2)をLECT2欠損マウスに投与し、損傷腸管上皮の修復応答の誘導を検証していくことで、腸炎寛解移行に関わる腸管と肝臓の臓器連関を見出される可能性があると考えた。そこで、mrLECT2を調製するための遺伝子発現ベクターを構築し、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)へのトランスフェクションを行い、mrLECT2発現細胞を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス投与実験に十分な量のmrLECT2を確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
腸炎を誘導したLECT2欠損マウスにmrLECT2を投与することで、LECT2が腸上皮組織の回復に寄与することを検証する。さらに、LECT2が腸炎重篤期の腸管組織に影響を及ぼしている表現型を探索することを目的に、野生型マウスおよびLECT2欠損マウス(day 8)における腸上皮組織のフェノタイプを比較解析する。
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Causes of Carryover |
マウス実験の進捗が予定より遅れたため、残予算が生じてしまった。次年度使用額は、2024年度のマウス実験への支出を計画している。
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