2023 Fiscal Year Research-status Report
RXRα遺伝子改変マウスを用いた肥満関連大腸癌の発癌機序の解明
Project/Area Number |
23K07414
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
境 浩康 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (40738259)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | レチノイド核内受容体 / RXRα / 遺伝子改変マウス / 肥満 / メタボリック症候群 / 高脂肪食 / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満関連大腸発癌におけるRXRαの役割を検討するために、令和5年度は肥満・代謝異常モデルの確立を目標とした。始めにRXRα遺伝子改変マウスと対照マウスにDoxycycline(Dox)を10週間飲水投与し体重の推移を確認したが、dominant-negativeなRXRαの発現のみでは両群間に明らかな体重差は確認されなかった。次に両群にDoxの飲水投与下に60%高脂肪食(High Fat Diet: HFD)を経口投与し、肥満の病態に差が生じるか確認した。対照群では経時的に体重が増加したが、遺伝子改変マウス群ではHFD開始2週目以降で体重増加が緩やかになり対照群と比較して有意な体重減少を認めた。また、10週(屠殺時)の臓器重量を確認すると、骨格筋量(前脛骨筋+腓腹筋)(g)は両群で差を認めなかったが(対照群:0.11±0.02 vs 遺伝子改変マウス群:0.08±0.02, p=0.27)、白色脂肪細胞量(精巣周囲脂肪)(g)は遺伝子改変マウス群で有意な減少を認めた(対照群:1.6±0.1 vs 遺伝子改変マウス群:0.5±0.1, p<0.01)。また、肝臓への脂肪沈着をH&E染色で評価したところ、対照群では肝小葉に脂肪滴の沈着が目立つ一方で、遺伝子改変マウス群では脂肪滴の減少を認めた。以上の結果から、当初の予想に反してdominant-negativeなRXRα(RXRαシグナルの抑制)は高脂肪食による肥満や脂肪肝に対して抑制的に作用することが明らかになった。 Dominant-negativeなRXRαを大腸陰上皮で6ヶ月強制発現させたが、大腸腫瘍は確認されなかった。そこで大腸炎症を誘発する目的で経肛門的に2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を投与したところ、遺伝子改変マウス群は投与3日目での体重が有意に低下し、組織学的に遷延する大腸炎症を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予想に反してdominant-negativeなRXRα(RXRαシグナルの抑制)は高脂肪食による肥満や脂肪肝に対して抑制的に作用することが明らかになった。本研究課題である、肥満関連大腸発癌のモデルとしては適切でないため別のモデル(コリン欠乏食:エピジェネティックな修飾変化や脂肪肝を誘導)を用いた検討が必要である。実験モデルの再検討・作製に時間を要しており当初予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
Dominant-negativeなRXRαの発現誘導のみでは肥満の病態を誘導できず、また、高脂肪食の負荷によっても肥満は誘導されなかった。本研究では「肥満おける大腸発癌」をテーマとしていることから、肥満や代謝異常を来す疾患モデルの作製が必要である。このため、今後はエピジェネティックな修飾変化や脂肪肝を誘導するコリン欠乏食の投与、1型糖尿病を誘導するストレプトゾトシンの投与、また、レプチン受容体の異常により過食・肥満・高血糖を来すdb/dbマウスとの交配など別の手法を用いて肥満や代謝異常を呈する疾患モデルを作製する。 RXRα遺伝子改変マウスは対照マウスと比較してTNBS誘発大腸炎に対して感受性を示し、大腸炎症発癌への関与が示唆された。今後は観察期間を延長して大腸腫瘍形成の有無について評価を行う。また、大腸粘膜における炎症細胞の分布や炎症性サイトカインについても評価を行う。 令和5年度の研究結果は当初の予想に反するものであったが、RXRαのシグナルを抑制することによって高脂肪食による内臓脂肪の沈着(肥満)や脂肪肝が抑制されており、RXRαが肥満治療の新規ターゲットとなる可能性を示唆した。本課題とは異なるが、高脂肪食負荷モデルの内臓脂肪や肝臓における代謝経路の変化についてプロテオーム解析などによって網羅的に評価を行う。RXRαを標的とした新規肥満治療の可能性についても並行して研究を進めて行く。
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Causes of Carryover |
動物実験に係る維持管理費の増加が予想されるため、次年度への繰り越しが生じた。 また、研究成果発表のため、国内外での学会参加旅費に充てられる。
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