2023 Fiscal Year Research-status Report
胃の分化状態に基づくエピゲノム異常感受性の違いとそのメカニズムの解明
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23K07425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 千尋 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60836055)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エピゲノム不安定性 / クロマチンアクセシビリティ / DNAメチル化 / 幹細胞 / 胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、胃の慢性炎症に対するエピゲノム異常感受性が分化状態により異なることを確認し、幹細胞におけるエピゲノム異常誘発を抑制するメカニズムを解明する。 1年目の2023年度は、ヒトのピロリ菌感染胃粘膜と正常胃粘膜を用いたシングルセル解析を行い、細胞の分化状態に応じてエピゲノム感受性が異なるかどうかを調べた。正常胃粘膜細胞をコントロールとして、ピロリ菌非感染状態では各遺伝子の特定の領域のクロマチン状態について確認した。そして、ピロリ菌感染によりクロマチン異常のが起こる頻度を定量化した。細胞の分化状態に応じてクロマチン異常の頻度に違いが起こるかを確認したところ、仮説の通り、幹細胞において分化細胞に比べてクロマチン異常が発生する頻度が低いことが明らかになった。 次に、ピロリ菌による慢性炎症について、ヒトだけでなくマウスでの変化についても確認すため、マウスのピロリ菌感染胃粘膜と正常胃粘膜を用いたシングルセル解析を行った。マウスにピロリ菌(PMSS1株)を16週感染させ、感染胃粘膜および非感染胃粘膜についてセルバンカーで凍結保存した。感染が成立していることをPCR及び病理学的に確認してから、ヒトと同様にシングルセル解析を行った。現在、シークエンス結果を解析中である。 さらに、エピゲノム感受性が分化状態により異なるメカニズムを解析するために、オルガノイドを用いた分化誘導モデルを検討した。通常の培養条件においては幹細胞richな状態であることを確認し、培地からWntを抜くと腺窩上皮細胞への分化が認められることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画からはおおむね順調に進展していると考えられる。具体的には、解析に必要な検体の採取は順調に推移しており、シングルセル解析の結果から仮説である幹細胞においてエピゲノム不安定性が低く、分化細胞では高いという結果が得られている。さらに検体数を増やし解析を行うとともに、エピゲノム感受性に関与するメカニズムの同定に取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の2024年度以降は、以下の通り研究を遂行する予定である。 (1)胃の慢性炎症に対するエピゲノム異常感受性が分化状態により異なることの実証:分化状態にマウスのピロリ菌感染モデルにおいて、ヒトと同様に胃の幹細胞では分化細胞に比べてエピゲノム感受性が低いことを確認する。またこの結果の妥当性を担保するために、ヒト・マウス共に検体数を増やしてシングルセル解析を行う。 (2)エピゲノム異常感受性のメカニズムの解明:オルガノイドの分化誘導モデルを用いて、炎症を誘導するサイトカインで処理する。処理後のオルガノイドに対してシングルセルまたはBulkのRNA-seq/ATAC-seq解析を行い、幹細胞において発現が変化しエピゲノム異常感受性に寄与する遺伝子を同定する。また分化誘導もでるにおいてはエピゲノム異常がより誘発されていることも確認する。
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Causes of Carryover |
2023年度は主に検体採取・シングルセル解析の手法の確立を行った。2024年度以降、追加検体を用いたシングルセル解析に必要な試薬・シークエンス費用、またメカニズムの解明のためのオルガノイド培養に研究費の費用が見込まられる。
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