2023 Fiscal Year Research-status Report
歯周病関連NASHにおけるNrf2の役割 - 歯周病原菌リポ多糖の腸肝連関に着目して
Project/Area Number |
23K07431
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高山 敬子 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (40925103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
土屋 輝一郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40376786)
内田 文彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70736008)
鈴木 英雄 筑波大学, プレシジョン・メディスン開発研究センター, 客員教授 (00400672)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | NASH / 歯周病 / Nrf2 / Porphyromonas gingivalis / 臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,臓器連関の視点からLPSを介したNASH腸肝連関におけるNrf2の役割を解明することを目的とし,全身Nrf2遺伝子欠失マウス(Nrf2-KO)をベースにKupffer細胞(肝臓マクロファージ),にのみNrf2を発現するマクロファージ特異的Nrf2遺伝子レスキューマウス(Nrf2-mRes)を作製した.これらのマウスと野生型マウス(WT)に,60%高脂肪食を5週齢から23週齢の18週間摂餌させ,並行して17週齢から23週齢の6週間にわたり,Porphyromonas gingivalis(P.g)由来のLPSを 0.3mg/kg投与し,NASHの病態を比較した. 高脂肪食摂餌により,3系統のマウスで肥満が認められたが,各群で大きな差は認められなかった.また,GTTやITTによる評価では,むしろWTよりもNrf2-KOで耐糖能は軽快していた.一方,WTでは肝の脂肪化は認めるものの肝炎症線維化は乏しかったが,Nrf2-KOではNASHを発症し,更に,Nrf2-mResでは,これらの肝炎症と線維化が軽減していた.Steatosis activity fibrosis score(SAF score)による肝の脂肪化・炎症・線維化の定量評価でも,同様の結果が有意差を持って認められ,qPCR解析でもNrf2-KOでは炎症・線維化に関わる因子のmRNA発現が増加していたものの,これらの変化がNrf2-mResでは経過していた.肝組織でのF4/80のimmunoblotはNrf2-KOとNrf2-mResでは同程度であったにも関わらず,LPS binding protein(LBP)の発現は,Nrf2-mResで軽減しており,マクロファージにおけるNrf2の発現が肝臓におけるLPSの代謝(解毒)に重要な枠割を果たしていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,歯周病菌LPSとNASHの腸管連関におけるNrf2の役割を明らかにする目的で,Porphyromonas gingivalis(P.g)由来のLPSの腹腔内投与+高脂肪食摂餌モデルと,P.g生菌それ自体の経口ゾンデ投与+高脂肪食摂餌という2つのモデルを計画した. そのうち,P.g由来LPS腹腔内投与モデルについては,先述したようにマクロファージのNrf2がLPSの解毒代謝に重要な役割を果たすという結果が得られた.ただし,LPS腹腔内投与モデルでは,P.gが腸管細菌叢に与える影響や,腸管上皮のNrf2の役割を検討できないため,今後は腸管上皮細胞特異的Nrf2レスキューマウスも含めて,P.g生菌をゾンデ投与し,NASHの表現型,更に,P.gによる小腸上皮や内臓脂肪への影響を解析する計画である.遺伝子改変マウスの繁殖は問題なく進捗しており,P.g生菌のゾンデ投与を開始している.
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Strategy for Future Research Activity |
P.g生菌の経口ゾンデ投与が完了次第,肝組織の病理標本評価によるNASHの病勢評価,血液生化学検査,qPCRを行う.また,P.gが小腸上皮に与える影響については,HE染色による小腸上皮の障害の評価に加え,粘液分泌タンパクであるMuc2やtight junctionタンパクであるZo-1の免疫染色,また,F4/80免疫染色によりマクロファージの浸潤程度を評価する.また,P.gにより内臓脂肪への炎症波及も想定されるため,精巣上体の白色脂肪の炎症(crown like structureなど)を評価予定である. 臨床研究については,肝臓生活習慣外来に通院していたNAFLD患者について,歯周病の評価を行い,血液生化学検査,腹部超音波検査などのNAFLDに関わる臨床情報についてデータの集積・解析を開始している.
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Causes of Carryover |
使用を予定していた遺伝子改変マウスの実験計画が順調に進行したことと,マウス糞便の腸内細菌叢解析を2023年度中に行うことができなかったため,2023年度に使用予定だった高脂肪食,飼育費に余剰が生じた. これらの助成金は,2024年度のマウス糞便の腸内細菌叢解析費用,およびマウス繁殖飼育費(2024年度は更に多種のNrf2遺伝子改変マウスを使用する予定)に充てる予定である.
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Research Products
(5 results)