2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of multi-organ involvements in IgG4-related disease from the view of microbiome profile
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23K07450
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
三長 孝輔 近畿大学, 医学部, 講師 (30793814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 智裕 近畿大学, 医学部, 准教授 (40444468)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | IgG4関連疾患 / 自己免疫性膵炎 / 腸内細菌叢 / 細菌叢プロファイル / Dysbiosis / 形質細胞様樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腸内細菌・口腔内細菌がIgG4関連疾患の発症に及ぼす効果を罹患臓器別の細菌叢プロファイルの観点から解析し、IgG4関連疾患における多臓器病変形成のメカニズムを解明することを目標としている。これまでの研究から、IgG4関連疾患の最大の罹患臓器である膵臓では、腸内細菌叢の乱れを感知した形質細胞様樹状細胞(pDC)が炎症性サイトカイン(I型IFN・IL-33)を産生し膵炎の発症を促進することを見出している。また、IgG4関連型自己免疫性膵炎の発症に関与する細菌として腸管バリア破綻モデルを用いた実験によりStaphylococcus sciuriを炎症惹起性細菌の候補と同定した。腸管バリア破綻を誘導した自己免疫性膵炎マウスの糞便中の16S rRNA細菌叢解析では、S. sciuriの増加とともにAkkermansia muciniphilaの減少が認められたことから、A. muciniphilaを膵炎抑制菌の候補と考え、A. muciniphilaの腸管定着が炎症性サイトカイン経路の活性化を抑制することにより自己免疫性膵炎の発症を防止するのではないかと想定した。自己免疫性膵炎モデルマウスに低温殺菌したA. muciniphilaを連日経口投与し、膵炎抑制効果の有無を検討したが、A. muciniphilaの投与により病理組織学的に膵炎の改善は認められず、膵臓におけるpDCの活性化や炎症性サイトカインの産生の抑制効果も認められなかった。これらの結果から、A. muciniphilaは自己免疫性膵炎の発症抑制に関与する菌ではない可能性が示唆された。また、自己免疫性膵炎の発症に関わる免疫反応に関してさらに実験を進め、I型IFNを産生するCCR9+pDCとCCL25を産生するCXCR3+Th1細胞が相互に作用することで膵炎の自然・獲得免疫環境が形成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IgG4関連疾患における最大の罹患臓器である膵臓において、膵炎の発症に関与する細菌種の同定を試み、これまでに報告したS. sciuri以外の細菌候補の探索を行った。16s rRNA細菌叢解析の結果から、A. muciniphilaを炎症抑制細菌候補と考え、炎症抑制効果の有無を検証した。微生物学教室と連携し、A. muciniphilaを低温殺菌した死菌を作成し、経口投与を繰り返し行い、膵臓の組織学的変化やFACS、ELISAにより免疫細胞、炎症性サイトカインの変化を検討したが、positiveな結果は得られなかった。同時に、A. muciniphilaの慢性膵炎抑制効果の実験を並行して行っており、その最終段階のメカニズム解析に注力していたこと、および、IgG4関連型唾液腺炎の発症に関わる細菌の同定のために歯周炎の原因細菌であるPorphyromonas gingivalisを投与する口腔内バリア破綻モデル作成の調整に時間を要したことにより、想定より進捗がやや遅れたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目標であるS. sciuriを含めた腸内細菌・口腔内細菌がIgG4関連疾患の発症に及ぼす効果を罹患臓器別の細菌叢プロファイルの観点から解析し、IgG4関連疾患における多臓器病変形成のメカニズムの解明を達成するために、今後、以下の推進方策を検討している。まず、IgG4関連疾患の最大の罹患臓器である膵臓においては、膵炎惹起性細菌候補であるS. sciuriが、自己免疫性膵炎の病的免疫細胞である「I型IFN・IL-33を産生するpDC」及び「CCL25を産生するCXCR3+Th1細胞」の分化に及ぼす効果を解明し、特定の細菌に対する免疫反応の理解に基づくIgG4関連疾患の病態解明を目指す。また、IgG4関連疾患の好発臓器である唾液腺においては、解剖学的位置から口腔内細菌の影響を受けやすいのではないかとの想定のもと、IgG4関連型唾液腺炎の発症に関与する細菌叢や細菌種の同定を試みる。そのために、まず、歯周炎の代表菌であるP. gingivalisの口腔内投与による口腔内バリアの破綻が唾液腺炎の発症に及ぼす効果を検討し、唾液腺炎の増悪が確認されれば、膵炎の場合と同様に、唾液腺炎の発症に関与する細菌の同定を口腔内・唾液腺の16S rRNA菌叢解析を用いて行う。さらに、過去の報告においてP. gingivalisの経口投与により、口腔内・腸内細菌叢の細菌叢間移行現象が生じ、腸内細菌叢の構成変化が起こることが知られており、歯周炎モデルにおいて、唾液腺炎のみならず膵炎が増悪するかどうかに関しても検討を行う予定である。唾液腺炎の発症に関与する細菌種が同定できれば、膵炎の場合と同様にノトバイオートマウス研究を展開したい。
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Causes of Carryover |
IgG4関連型唾液腺炎の発症に関わる細菌の同定のための口腔内バリア破綻モデル作成の調整に時間を要したことが主な要因で、想定していた口腔内・唾液腺の細菌叢解析を次年度に持ち越したことにより次年度使用額が生じた。
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