2023 Fiscal Year Research-status Report
プラーク内出血とハプトグロビン遺伝子多型から見た新たな冠動脈イベント予防戦略
Project/Area Number |
23K07489
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
松本 英成 昭和大学, 医学部, 准教授 (30861132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 公平 昭和大学, 医学部, 准教授 (50384524)
新家 俊郎 昭和大学, 医学部, 教授 (60379419)
宮崎 拓郎 昭和大学, 医学部, 准教授 (80398693)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 冠動脈 / 動脈硬化 / プラーク内出血 / ハプトグロビン遺伝子多型 / MRI / CT |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの冠動脈プラークに関する多くの研究は、脂質成分に焦点を当てて行われてきた。動脈硬化性プラーク内出血は、プラーク不安定化や進行を惹起する危険因子として知られているが、ヒト冠動脈における生体内での臨床的意義は十分に検討されていない。我々の研究で新しいMRI撮影法であるCATCH法を用いることで、冠動脈プラーク内出血を高信号プラークとして同定し、脂質性プラークとは別の観点からプラークの不安定性を評価できることを明らかにした。出血に伴い生成されるメトヘモグロビンの阻害因子であるハプトグロビンの遺伝子多型は、出血後のプラーク不安定化や進展に関与するとされ、プラーク内出血のさらなるリスク層別化が期待できる。 本研究では、冠動脈CTで低吸収プラークを有する患者に対し、CATCH MRIにより冠動脈プラーク内出血及びハプトグロビン遺伝子多型を同定し、冠動脈イベントを追跡調査する。さらに1年後の冠動脈CTにより、病変の変化を検討している。 2023年度には、血管内イメージングを用いて、プラーク内出血が経皮的冠動脈インターベンション周術期心筋障害の独立関連因子になることを論文に報告し、プラーク内出血が脂質性プラークとは別の観点からプラークの不安定性を評価できることを立証した。さらに、血管内イメージングとの比較により、CTの低吸収プラークが脂質、プラーク内出血、コレステロールクレフトなど様々なプラーク要素に関連することを論文で明らかにした。これらの成果は、冠動脈CTで低吸収プラークを有する患者において、MRIでプラーク内出血を同定する本研究のアプローチの妥当性を示すものである。 本研究を通じてプラーク内出血とハプトグロビン遺伝子多型を基にした新たな冠動脈イベント予防戦略を確立することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、54例の患者に対しベースラインのCTとMRIを実施し、うち12例にMRIによりプラーク内出血が確認された。興味深いことに、プラーク内出血群では3例(25%)に冠動脈イベント(急性冠症候群2例、病変進行による血行再建1例)が発生した。これに対し、非プラーク内出血群の42例ではいずれの症例でもイベントは発生していない。この結果は、プラーク内出血に基づくリスク層別化が有用であることを示唆しており、さらに症例数増加を図っている。冠動脈プラークの詳細な解析については、解析ソフトウェアのバージョンアップを待ってから解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、プラーク内出血群が少なくハプトグロビン遺伝子多型による解析が困難であるため、十分な症例数を目指す。冠動脈CTは、冠動脈疾患診断における第一選択の検査手段であるが、従来の評価法ではプラーク内出血の同定が難しいのが現状である。本研究データを基に、Radiomics解析を含む新しい手法を用いて、プラーク内出血同定の可能性を模索する。
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Causes of Carryover |
本年度は解析ソフトウェアのバージョンアップを待っているため、冠動脈CT解析は行っておりません。従って、画像解析費用と人件費は次年度に繰り越し使用する予定である。
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