2023 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of new test methods for adenosine-sensitive atrioventricular block
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23K07566
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
河野 律子 産業医科大学, 医学部, 特任准教授 (20449945)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 失神 / 房室ブロック / アデノシン / ペースメーカ / 植込み型心電計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、正常心機能と正常心電図を呈するにもかかわらず失神を繰り返している患者で、(1)アデノシン感受性房室ブロックが疑われる患者と(2)すでにアデノシン感受性房室ブロックと診断している患者を対象にして、血中アデノシン濃度を測定し、その測定結果が診断に利用できることを明らかにすることである。本研究における血液検査は、通常測定しない項目であり保険診療外となるため、診療に訪れた患者に研究内容を十分に説明し、理解を得て行う必要があった。そのため、倫理委員会では、十分な審査を受けた。 患者や健常対象者から採血を行う直前に、その時の体調などの情報を得るためのアンケート調査内容についての作成を行った。アデノシン血中濃度を測定するためのキットの選定を行った。まず、産業医科大学病院で過去10 年間に、発作性房室ブロックのためペースメーカ治療を行った90 人の患者の経過を解析した。その内22 人はアデノシン感受性房室ブロックが疑われる経過であることを確認した。 失神発作を繰り返すため、来院した70歳代の女性患者において、心電図や心エコー検査、ホルター心電図を行った。ホルター心電図装着中に、偶然2度の失神の再発があり、その時に一致して、発作性の房室ブロックが捕らえられた。総合的な検査結果の解析から、アデノシン感受性房室ブロックを疑った。このため、入院精査を行うこととなり、電気生理学的検査を行った。その結果、房室伝導機能には器質的な異常は全くないことが確認された。その後、20mgのATPを急速静注することで、28秒間のAH blockが確認された。この結果から、本症例は、アデノシン感受性房室ブロックであると診断した。このことから、私達が臨床経過や検査結果からアデノシン感受性房室ブロックを疑っている患者の特徴は、患者を選択する指標として、それほど矛盾するものではないことが予測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究において、患者から保険診療外の検体を行うこともあり、倫理的な問題が取り上げられるが、倫理審査において、多くの質問を受け、説明文書の作成や同意書の作成に時間を要した。また、患者や対象者へのアンケート作成について、どのような項目が評価に必要であるのかの選択において、過去の報告を十分に確認し、今後の予測を行い、必要十分な内容にするために時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、アデノシン感受性房室ブロックを診断するための新たな検査法を検証することである。具体的な方法は、発作性房室ブロックが心電図で確認されており、正常心機能と心電図をもつアデノシン感受性房室ブロックが疑われる患者もしくは既にアデノシン感受性房室ブロックと診断されている患者から採血を行い、アデノシンの血中濃度を測定することである。産業医科大学病院の循環器内科へ来院する患者から対象患者を選択する。なるべく、研究を加速するために同一施設の医師にも働きかけ、対象者を抽出する。対象患者へ説明し承諾を得て採血を行い、血中アデノシン濃度を測定する。検体は産業医科大学共同利用研究センターに持参し、専門スタッフの指導のもとで、アデノシン測定キットと既存の機器を用いて測定する。また検査の信頼性をあげるために、コントロールとして年齢をマッチさせた健常者と刺激伝導系に異常がある房室ブロック患者も対象として比較検討する。ここでも、研究を加速するために、大学病院のスタッフに働きかけて、被検者をお願いする。また、医学部学生にも、対象者として募集をかけて、協力を依頼することを検討している。
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Causes of Carryover |
初年度に、アデノシン検体採取と測定に取り掛かる予定であったが、そこまでに至っていない。最も資金を要するのは、アデノシン測定キットと患者や対象者など、採血をお願いする方々への謝礼金である。そのため、次年度に予想よりも多くの資金が必要となることが予測される。本年使用しなかった予算は、次年度に使用するものと考えている。
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