2023 Fiscal Year Research-status Report
ナトリウム利尿ペプチド(NPs)は心肥大を促進しうるか
Project/Area Number |
23K07581
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
加藤 丈司 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 教授 (20274780)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴田 敏博 宮崎大学, 医学部, 教授 (10389570)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ナトリウム利尿ペプチド / 心肥大 / 循環調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】ナトリウム利尿ペプチド(NPs:ANP、BNP、CNP)は、心肥大や線維化に対して抑制的に作用すると報告されている。一方、本研究代表者らは、ノルアドレナリン(NA)持続投与下では、NPsが心肥大を促進する現象を「偶発的」に見出した。本研究では、NPsが心肥大を促進するならば、如何なる条件下で、心肥大促進作用が出現するかについて、その条件の特定と機序の解析を目的としている。 【方法】ウイスターラットを用いて以下の8群を作成した:対照群、NA持続投与群 (NA群)、ANP持続静注群 (ANP群)、CNP持続静注群 (CNP群)、NA+ANP群、NA+CNP群、NA+ANP+プラゾシン経口投与群、NA+ANP+アテノロール経口投与群。投与期間は14日間であり、浸透圧ミニポンプを用いて、NAを持続皮下投与し、ANPとCNPを頚静脈に持続静注した。心重量 (HW)、心重量/体重比 (HW/BW)を計測して、組織標本により、左室の心筋細胞サイズとコラーゲン沈着を評価した。 【成績】投与開始後、NA群の平均血圧は約20 mmHg上昇し、ANPとCNP投与の血圧への影響はなかった。NA群のHWは軽度増加し、NA+ANP群とNA+CNP群のHWは、対照群やNA群と比較して有意に増加した。NA+ANPによるHW増加は、プラゾシンやアテノロールにより抑制された。HW/BWと心筋細胞サイズにも同様の変化が観察された。左室コラーゲン量には各群間で差はなかった。 【考察】NPsはNAの心肥大促進作用を増強した。この現象は、α1とβ1受容体を介しており、A型とB型NPs受容体のいずれのシグナルでも発揮されると推測される。本研究の結果は、NPsの心臓に対する作用は、必ずしも心肥大抑制の一元的な作用ではないことを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.当該研究の成果について、英文原著1編(Peptides 2023)を発表し、国内および海外の学術集会にて、成果を発表した。2.当該研究実施の過程において、血圧変動性に関して新たな知見を得て、英文原著1編(Hypertens Res 2024)を発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.心肥大を生じる条件探索:1)NAに加えて、アンジオテンシンII(Ang II)等の心肥大促進因子とNPsの併用投与の効果を調べる。NPsの心肥大促進作用が確認されれば、以下の実験2)、3)に進む。2)組織学的解析:心室の組織標本を作製して、心筋細胞サイズを計測して、細胞肥大を定量する。シリウス赤染色により、線維化を定量する。3)分子生物学的解析:心筋組織中の肥大・線維化マーカー発現をPCRにて定量する:BNP、1型コラーゲン、TGF-β、α-smooth muscle actin(α-SMA)。 2.NPsの心肥大促進作用の機序解析: 2023年度の研究により、NA投与下でのNPsの心肥大促進作用が明確となったので、心肥大促進作用の機序を解析する。1)NPsのセカンドメッセンジャーとして、サイクリックGMP(cGMP)が知られているので、NA投与ラットを対象に、cGMPを上昇させる薬剤であるニトロ化合物の効果を観察する。2)NPsの一般的かつ主要な薬理作用は、利尿作用と血管拡張作用であるので、NA投与ラットにおける利尿薬または血管拡張薬の効果を観察する。 3.異なる動物種による解析:ラットを用いた研究1)にて、ポジティブな結果が得られた場合、同一条件にて、マウスで再現されることを確認しつつ研究を進める。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:1.当初の予想を超えて、最小限の研究費使用により効率よく研究を実施することができた。2.有意義な成果が得られたので、エフォートを実験実施から論文・学会発表へとシフトして研究に取り組んだ。 使用計画:当該研究実施のための研究消耗品および情報収集・成果発表のための旅費に充てる。
|
Research Products
(8 results)