2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of transcriptional regulatory mechanism defining the onset and progression of lung cancer with comorbid interstitial pneumonia and its application for its therapeutic application
Project/Area Number |
23K07657
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
小山 信之 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30353460)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 間質性肺炎合併肺癌 / 間質性肺炎 / 非小細胞肺癌 / 共通発症・進展経路 / RNA-seq / ATAC-seq / 統合解析 / 転写制御ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度では埼玉医科大学総合医療センター研究倫理委員会にて本研究承認後、先行科研費研究のRNA-seqで用いた間質性肺炎合併肺癌外科切除検体を用いて、ATAC-seqを行った。3例の間質性肺炎合併肺癌症例の肺癌組織と周囲の間質性肺炎組織、正常肺組織を、各々Tn5トランスポーゼス処理後にゲノムDNAを抽出、精製し、ライブラリーを構築して次世代シークエンサーによりシークエンスした。解析結果から、正常肺組織と比較して同一症例の肺癌組織、間質性肺炎組織で共通に発現変化が見られた領域をデータ処理したところ、44のcoding RNA、non-coding RNAのプロモーター、イントロン等non-coding DNA領域が3症例で共通して活性亢進していた。一方、20のcoding RNA、non-coding RNAの non-coding DNA領域では3症例で共通して活性が低下していた。抽出された領域のうち、複数の転写因子におけるプロモーター領域が3症例の肺癌組織、間質性肺炎組織で正常肺組織と比較して共通に活性亢進していたが、過去の報告から転写因子は肺癌、間質性肺炎両疾患の発症、進展に関与していることが示唆される。また、先行科研費研究のRNA-seqにてATAC-seqと同一の3症例における肺癌組織と間質性肺炎組織で正常肺組織に比して共通に発現が変化していたmRNAとの関連も報告されており、間質性肺炎合併肺癌発症・進展を規定する転写制御ネットワークの標的の一つである可能性が考えられる。更に、RNA-seqで抽出された複数のlncRNAがATAC-seqで活性変化があったDNA領域と関連している可能性も考えられ、解析を進めている。 現在研究協力者である九州大学平川英樹教授と連携して、今回のATAC-seqと先行科研費研究にて同一検体から得られたRNA-seqの統合解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度では、先行科研費研究で行った間質性肺炎合併肺癌3症例の肺癌組織、間質性肺炎組織、正常肺組織を用いたRNA-seqと同一検体を用いてATAC-seqを行った。解析データ処理後、3症例の肺癌組織、間質性肺組織において正常肺組織と比較して共通に活性亢進が見られたDNA領域と関連する遺伝子群を抽出することができた。そのうち複数の遺伝子については、先行科研費研究で行ったRNA-seqにおいて間質性肺炎合併肺癌3症例の肺癌組織、間質性肺組織で、正常肺組織と比較し、共通に発現が変化していた遺伝子群との関連が報告または示唆されている。これらにおける遺伝子間相互関係は、間質性肺炎合併肺癌の発症・進展を規定する転写制御ネットワークの一部である可能性が考えられ、各相互作用機能の中核をなすDNA部位・因子を同定するため、データベース等を用いて個々に解析を進めている。DNA部位・因子同定後は、令和6年度に予定しているCRISPR/Cas9を用いた標的DNA部位・因子のノックアウト・ノックインを行う。CRISPR/Cas9作製については、当初外部委託を予定していたが、他施設との共同研究が可能となっており、共同研究を進めている。 今年度研究の結果をもとに、令和5年度に予定していた先行科研費研究にて取得済みのRNA-seq結果と今回のATAC-seq結果を統合解析することにより、間質性肺炎合併肺癌の発症・進展を規定する転写制御ネットワークを更に包括的に解明することが期待できると考え、研究協力者である九州大学平川英樹教授と連携し、既に統合解析を進めている。 令和5年度においては、複数の遺伝子における転写制御部位・因子を特定することができ、統合解析に関しては令和5年度中に完了しなかったが、令和6年度前半には解析を済ませ、標的DNA部位を特定する予定としている。以上から、概ね予定通りの進捗だったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和6年度ではATAC-seqの結果をもとに、先行科研費研究で得られたRNA-seqの結果との統合解析を令和6年度前半に完了させる。研究協力者である九州大学平川英樹教授と連携し、既に統合解析を進めているため、現在予定する統合解析完了は見込める。その後、標的となる転写制御領域のDNA部位・因子を特定し、CRISPR/Casp9を用いてノックアウト・ノックインを行う。ATAC-seqにおいて3症例の肺癌組織、間質性肺炎組織で正常肺組織と比較して共通に見られた変化はDNA領域の活性亢進が主体であり、RNA-seqでも3症例の肺癌組織、間質性肺炎組織で正常肺組織と比較して共通に発現亢進していた遺伝子群が多かった。以上から、活性亢進したDNA領域を中心に標的DNA部位・因子の特定を進めるため、CRISPR/Casp9では標的DNA部位・因子をノックアウトする予定としている。CRIPR/Cas9作製については、当初外部委託を予定していたが、他施設との共同研究を進めており、令和6年度前半、統合解析完了後、直ちに作製を開始する。 CRISPR/Cas9システム構築後、非小細胞肺癌細胞株および線維芽細胞株へ細胞内導入を行う。非小細胞肺癌株については、肺腺癌細胞株であるA549と肺扁平上皮癌細胞株であるSQ5を用い、線維芽細胞株についてはIMR-90を採用するが、CRISPR/Cas9導入効率不良等、予定通り進捗しない場合、すでに保有している他の細胞株へ変更する。CRISPR/Cas9導入後、肺癌細胞株ではCell growth assay(増殖能)、Matrigel invasion assay(浸潤・転移能)、E-cadherinとVimentinの発現(EMT)を評価し、線維芽細胞株においてはEMT(肺線維化)、α平滑筋アクチン発現による線維芽細胞の筋線維芽細胞分化(肺線維化)を評価する。
|
Causes of Carryover |
令和5年度ではATAC-seqを行い、さらに標的DNA部位・因子の同定に向けた費用を計上したが、ATAC-seqに対する支出のみとなった。ATAC-seqの結果をデータ処理し、先行科研費研究で得られたRNA-seqの結果と比較したところ、複数の遺伝子およびDNA領域が転写制御ネットワーク解明に資する可能性が考えられたため、転写を制御する標的DNA部位・因子の同定を試みるとともに、現在ATAC-seqとRNA-seqの統合解析を進めている。そのため、標的DNA部位・因子の最終的な同定は令和6年度前半となり、次年度使用額が生じた。令和6年度は標的DNA部位・因子の同定から間質性肺炎合併肺癌における転写制御ネットワーク解明へつなげるため、CRISPR/Cas9導入を用いた標的DNA部位・因子ノックアウトにより、肺癌細胞株の増殖能および浸潤・転移能、EMT低下、線維芽細胞のEMT、筋線維芽細胞分化能低下がみられることを確認する。そのため、令和5年度ではATAC-seqのみに支出した一方、令和6年度では標的DNA部位・因子の最終的な同定、ATAC-seq結果に基づいたCRISPR/Cas9作製および細胞株を用いた機能解析を予定している。 以上から、次年度(令和6年度)使用額が生じるとともに、次年度使用額は令和6年度交付助成金と合わせ、令和5年度の解析と直接関係する研究に支出することとしている。
|