2023 Fiscal Year Research-status Report
尿中セリンプロテアーゼによるENaC、AQP2活性化機序の解明と臨床応用
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23K07676
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
柿添 豊 熊本大学, 病院, 准教授 (70583037)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | セリンプロテアーゼ / プラスミン / ENaC |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで食塩感受性高血圧ラットにおいてセリンプロテアーゼ(SP)による上皮型Naチャネル(ENaC)活性化と、SP阻害薬(SPI)によるNa利尿・降圧効果を報告してきた。さらに最近、正常ラットにおいてSPIが尿エクソソームAQP2の低下を伴う水利尿作用を持つことを報告した。しかし、SPによるENaCおよびAQP2の活性化の詳細な分子機序と、この系が高血圧・体液貯留患者の治療標的となり得るかについては解明できていないため、さらなる検討が必要である。 2023年度は、食塩感受性高血圧の病態に関与する尿中SPを検出するために、食塩を負荷したDahl食塩感受性高血圧ラットの尿を用いてSP特異的ザイモグラフィーを行い、特に活性が強いSPとしてプラスミンを検出した。また、このDahlラットの腎臓ではSPによって活性化されるNa輸送体であるENaCの活性化を認め、血圧が著明に上昇した。Dahlラットにプラスミンを阻害するSPI・メシル酸カモスタットを投与すると、プラスミンの活性を抑制するとともに、ENaCの活性化を抑制し、有意な降圧効果を呈した。 さらにプラスミンは糸球体上皮細胞(ポドサイト)に沈着し、PAR1の活性化、アポトーシスの誘導、炎症・線維化関連分子の発現亢進などを介してポドサイト障害を誘導し、これにより蛋白尿と糸球体硬化を呈していると考えられた。カモスタットはプラスミンのポドサイトへの沈着を抑制するとともに、これらの変化を抑制し、蛋白尿と糸球体硬化を軽減した。 食塩感受性高血圧は食塩非感受性高血圧に比べて脳心血管病の発症が多く、予後が不良であるため、新たな治療法の開発が必要である。これまでの検討で、食塩感受性高血圧の病態に尿中プラスミンが関与しており、プラスミンが治療標的となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食塩感受性高血圧ラットを用いて、尿中のセリンプロテアーゼであるプラスミンのENaC活性化を介して血圧上昇への作用やポドサイト障害を介した糸球体障害への作用を解明し、またプラスミンを阻害するセリンプロテアーゼ阻害薬の治療効果を明らかにした。これらの結果を論文化しており、これまでの研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、尿中のセリンプロテアーゼであるプラスミンによるENaCの活性化と血圧上昇作用を明らかにできた。現在、高血圧・腎疾患患者の尿中プラスミンの測定を行っており、今後は血圧等の臨床データとの相関関係を検討する予定である。 さらに、尿中セリンプロテアーゼによるAQP2活性化の機序を解明するための研究を行う。
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