2023 Fiscal Year Research-status Report
The function of podocyte specific protein dendrin
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23K07692
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
奥永 一成 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (30969225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淺沼 克彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (60449064)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | デンドリン / ポドサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病患者の増加が世界的な問題になっている。腎臓では血液から尿を作成しているが、血液から尿をろ過している部位にはポドサイトという細胞が存在し、腎臓において重要な細胞と考えられている。そのため、近年様々なポドサイトに関連した蛋白の機能解析が行われているが、いまだ治療薬の開発には至っていない。ポドサイトに関連した蛋白のひとつであるデンドリンは、ポドサイトの障害にともない核に移行するユニークな特徴があり、CKD進行において重要な所見と思われる。しかし、ポドサイトにおいてデンドリンが実際にどのような機能をもっているかは不明である。本研究ではポドサイトにおけるデンドリンの機能の解明を目的としている。腎臓からポドサイトを単離して培養する際に、スリット膜は消失し、本来発現するデンドリンはほとんど発現していない。そこで、デンドリンを強制発現させたポドサイトを作成した。デンドリンは核移行配列であるnuclear localization signal 1(NLS1)をもっており、NLS1によって核へ移行する。そこでNLS1を喪失させたデンドリンを強制発現したポドサイトも作成した。これらのポドサイトを用いて、ポドサイトに細胞毒性のある薬剤アドレアマイシンを投与して、RNA-Seq解析を行った。その結果からデンドリンの細胞内局在の変化やポドサイト障害によって発現が変化する遺伝子群が判明した。それらの同定された発現変動遺伝子からエンリッチメント解析を行った。さらに、デンドリンが核や細胞質で制御している分子を解明するために、RNA-Seq解析より得られた発現変動遺伝子からデンドリンの制御する候補分子を推定し、培養ポドサイトのリアルタイムPCRや免疫染色、イムノブロッティング法などで実際に発現量が変化しているかを現在確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は以下の通りである。RNA-Seq解析の結果より得られたデンドリンの制御する候補分子に対し、培養ポドサイトを用いてリアルタイムPCRや免疫染色、イムノブロッティング法などを行うことで蛋白やRNAの発現を確認する。また特定の蛋白がデンドリンと直接相互作用しているのかどうか調べるために共免疫沈降法を行う。培養ポドサイトで特定の分子が同定されれば、次にはマウスで特定の分子が発現しているか確認し、それが疾患モデルマウスやデンドリン欠損マウスでどのように変化するか確認する予定である。また実験動物でも確認できれば、最終的には腎疾患患者の腎生検検体などを用いて、デンドリンが制御する分子を同定・解析をしていく。現在RNA-seq解析から発現変動遺伝子を同定し、エンリッチメント解析も行っており、デンドリンの制御する候補蛋白について、培養ポドサイトで発現量を確認しているところであり、当初の計画通りに進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在RNA-seq解析から発現変動遺伝子を同定し、エンリッチメント解析も行っており、デンドリンの制御する候補蛋白について、培養ポドサイトで発現量を確認しているところである。当初の計画通り、今後は培養ポドサイトでの発現の変化を確認出来たら、腎炎モデルマウスでデンドリンの局在の変化と一致して、デンドリンの制御する候補蛋白の発現量が変化しているか確認することを計画している。またデンドリンの制御する候補蛋白がデンドリンと直接相互作用しているのかどうかも、CoIPやGFPプルダウン法など結合アッセイで評価することを計画している。実験マウスで予想通りデンドリンの制御する候補蛋白が同定できれば、最終的には腎疾患患者さんで同様にデンドリンの制御する候補蛋白の発現量が変化しているか確認することを計画している。これらの実験のためには腎炎モデルマウスやヒト腎疾患患者さんのサンプルの準備が必要であるが、実験マウスの交配や腎疾患患者さんへの説明・同意も並行して行っており、サンプルの準備も順調に進んでいる。
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Causes of Carryover |
本研究の計画では、RNA-seq解析からデンドリンの制御する候補蛋白を同定することである。今までにはデンドリンを強制発現させたポドサイトやデンドリンのnuclear localization signal 1(NLS1)を喪失させたデンドリンを強制発現したポドサイトを作成した。これらのポドサイトを用いて、ポドサイトに細胞毒性のある薬剤アドレアマイシンを投与して、RNA-Seq解析を行った。その結果から発現変動遺伝子を同定し、エンリッチメント解析を行った。その結果デンドリンの局在やアドリアマイシン投与によって変化する分子群が判明した。さらに、デンドリンが核や細胞質で制御している分子を解明することために、RNA-Seq解析より得られた発現変動遺伝子からデンドリンの制御する候補分子を推定した。現在は、培養ポドサイトのリアルタイムPCRや免疫染色、イムノブロッティング法などで実際に発現量が変化しているか確認しているが、これらの実験には培養ポドサイトを準備するための試薬やデンドリンの候補蛋白を同定するための試薬など高額な実験試薬が必要となる。今までのRNA-seq解析からデンドリンの候補蛋白を同定する作業では必要な試薬は少なかったことが、次年度使用額が生じた主な理由と考えられる。
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